jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

オリンピック開催:「いつでも、どこでも、何度でも」

新型コロナウイルス が蔓延している状態で、東京オリンピックは開催することになりそうだ、と多くの人が感じている。最近のシミュレーションを見ると、8月の頭にはまだ500-600人/日の感染者が発生するだろう、としている。そんな状況に、世界中から人間が集まってきたら、ろくなことになるわけがない。

国外からのオリンピック参加者に対し、「バブル方式」というのを政府は採用するそうである。つまり、オリンピックに参加する人たちは、「閉じた空間」の中だけで活動できる、というのだ。競技場から出ない、宿泊しているホテルから出れない、選手村から離れない、専用移動車両以外には使わない、というわけで、「泡の中」に閉じ込める、ということらしい。東京都民や日本国民からしてみれば、たしかにこの方法は安全に見える。しかし、選手からしてみたらどうだろうか?

仮に、このバブルの中に、感染した選手が一人いたとしよう。最初は無症状感染なのだが、来日して7日目ぐらいに頭痛から始まり、軽い咳き込みなど、症状が次第に進展していくが、PCR検査をやっても、まだまだ陽性を出すにはウイルス量が不足し、陰性がで続ける....が、やがて発熱が始まり、下痢が止まらず....この状況をみたルームメートの選手はどう思うだろうか?

バブル方式なので、狭い場所に閉じ込められた1万人ほどの外国人選手や関係者は、逃げ場がなくなり、感染はあっという間に広まるはずだ。次から次へと症状が悪化する選手が選手村に発生したとなれば、まるで地下牢に閉じ込められた1000人の囚人の中に、たった一人の”バイオハザード”が紛れ込んでいたようなものである。

一斉に、選手たちは「バブル」から逃げ出そうとするだろう。選手村から脱出して、東京の別のホテルに滞在したいと思うかもしれないし、母国に帰りたいと空港に押し寄せる選手も出るだろうし、大使館に逃げ込む人、米軍基地を頼って横須賀まで行ってしまう人、とにかくめちゃくちゃになるはずである。しかし、そういう彼らもすでに感染しているかもしれない。果たして、セキュリティを請け負う警視庁は、こういう「脱走者」を射殺してでも止めるというのであろうか?

それは無理というものである。逃げたい人は逃げ出してしまうに違いない。パニックとなった選手村や競技会場の周辺は大変な騒ぎとなるだろう。

一方で、ワシントンポストの記事によれば、ここ最近、オリンピック招致を諦めた(というより自発的にヤメた)都市は数多く存在するという。記事に載っていたのは、バルセロナ(スペイン)、ボストン(米国)、ブダペストハンガリー)、ダボス(スイス)、ハンブルグ(ドイツ)、クラーコフ(ボーランド)、ミュンヘン(ドイツ)、オスロノルウェー)、ローマ(イタリア)、ストックホルムスウェーデン)、そしてトロント(カナダ)など、錚錚たる世界の名都市が「オリンピック開催は見合わない」と判断して、誘致をやめてしまったのだ。

リオデジャネイロ大会やアテネ大会で判明したのは、オリンピックだけでしか使わない施設が、開催後に廃墟になったり、取り壊されたり、国の経済の足かせになったりしている例である。アテネの野球場は廃墟となり、リオデジャネイロのゴルフ場はカピバラなど野生動物の宝庫になってしまっているらしい(巣穴で凸凹...)。

www.ssf.or.jp

つまり、無駄が多く、経費がかかりすぎるため、オリンピックで儲けるどころか、オリンピックで破産してしまうケースが増えてきたのである。国の税金が湯水のように使える「独裁系国家」ならまだしも、まともな民主主義国家が自国民の利益を考えるとき、オリンピック開催という選択肢はありえないのだ。(そういえば、最近のオリンピック開催地は中国とかロシア、あるいはブラジルなど、大金持ちか、国民主権の概念が弱い国か、経済が破綻しているのに政治家が強権的に物事を決定している国が多いような気がする....)。

こうして、オリンピック誘致を行う都市が激減し、実はオリンピックを勝ち取るのは年々楽勝になってきているのである。BBCの報道によれば、2004年のオリンピックをめぐっては11カ国が争った(アテネが勝者)そうだが、2024年のオリンピックをめぐってはわずか2カ国の争いだった(パリが勝者)という。

www.bbc.com

東京オリンピックは一生に一度あるかないかの貴重なチャンス」みたいなことをいう人がいたり、日本のメディアもそう宣伝して煽っているが、実はこれだけオリンピック誘致の人気が弱まると、希望すればいつでもオリンピックは開催できるのだ。ただし、金持ちでなくてはならないが(あるいは強権を発動して、国民の資産を巻き上げられるところ)。

ということで、日本のPCR検査なんかに比べたら、これから先の将来、オリンピック開催権を獲得なんていうのは、(金さえあれば)いつでも、どこでも、何度でも成功できるらしいのである!

東京オリンピックを今回は断念した方が、経済的にも得だし、感染爆発を起こして評判を落とす可能性も薄くなるはずだ。そして、ますます、「オリンピック開催はリスクが大きい」というメッセージを出すことになり、世界中のライバル都市を腰砕けにさせ、誘致をためらわせることができるだろう。早めの中止決定により、近い将来の再誘致に向けて東京は幸先の良い一歩を踏み出せるはずだ(個人的には”もうこりごり”だが)。