jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

麻生大臣のマウスシールド

麻生大臣が装着していることで、よく知られる「マウスシールド」。

https://img.news.goo.ne.jp/image_proxy/compress/q_80/picture/dailyshincho/m_dailyshincho-670200.jpg (goo newsより)

個人的には「いいね」と思っているのだが、実際のところはどれほど機能的な意味があるのか懐疑的な人も多いだろう。特にエアロゾルの観点からは、最近フェイスシールドとマウスシールドは(ウレタンマスク以上に)「除(の)け者扱い」にされているので、その効果について調べてみることにした。(とはいえ、やはり、決め手は富嶽のシミュレーションだった。)

まずは、麻生大臣の「マウスシールド」はどこで手に入れられるのであろうか?気になるので調べてみた(機能というより、もほやオブジェとしての興味である)。どうやらこちらの商品らしい。

http://wincam.co.jp/2020/wp-content/themes/wincam/assets/images/headset-img010-1000x675.jpg wincam.co.jpより

この会社の定義では、これは「透明マスク」というカテゴリーとなるそうで、商品名は「ヘッドセットマスク」というそうだ。

5μmまでの微粒子を可視化できるカメラで撮影した実験の様子が動画で公開されていて、非常に興味深い(特に、頭上周辺の様子がよく見えないアングルで撮影されている点)。

先日の調査でわかったのは、細かい飛沫は10μm程度ということであったから、5μmまで映る映像はそれなりに価値があるだろう。前方に飛沫が飛ばないのは当然と言えば当然であるが、我々がもっとも興味あるのは、マウスシールドの上方や下方にどれだけエアロゾルが抜けてしまうのか、あるいはマウスシールドで反射した飛沫がどれだけ後方に飛ぶのか、という点である。

ここで富嶽の登場である。合唱のケースなど、様々な状況でシミュレーションをしているが、ここでは食堂のケースを見てみよう(PC Watchがいろいろなケースについてまとめてくれている)。先日の記事で取り上げたケンブリッジ大学と同様に、富嶽でも「会話」つまり「おしゃべり」を想定して計算している。

まずは、マスクなし、マウスシールドなしの場合。

www.youtube.com

30秒でそれなりの(まずい感じの)量の飛沫がが対面の人物に吹きかかっているのが確認できる。

さて、ではマウスシールドを装着するとどうか?

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なかなかいいな、と思ったはずである。前方に座る方に直接の飛沫はほとんどかからない。ただ、青い飛沫(だいたい0.5μm程度の飛沫)が、頭上、そして顎の下あたりに漏れて漂っているのが確認できる。0.5μmというのは500nmだから、ウイルスの直径の5倍に相当する。大雑把にみて、この飛沫1つには125個程度のウイルスが入っている可能性があるということだ。塵も積もれば山となる、というが、この青色の「雲」が空間に滞留すると、感染のリスクが生じてしまうというのが、先日見たケンブリッジ大学のシミュレーション結果である。

上の動画の21秒目の様子をスクリーンショットしたのが、下の図である。

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マウスシールドの効果を検証する富嶽の計算(上の動画の21秒目のスクリーンショット

ケンブリッジ大学の研究チームが警告しているのが、この頭上あるいは顎の下に漂いでた飛沫の「雲」である。この「飛沫雲」は1時間以上も部屋に滞留するそうだから、この状態で30分飲み食いをすると、エアロゾルを吸い込んでしまって、感染の可能性が高まるだろう。

また、マウスシールドの傾き(角度)も重要だろう。もし、頭を前方に傾け、上目遣いに喋ってしまうと、飛沫の流れはもう少し前方に飛ぶはずである。装着角度を前方よりにした場合も同様になるだろう。このばあい、直接、人に吹きかかる確率も上がるはずだ。

ということで、マウスシールドは5μm程度の飛沫を防ぐ効果は結構あるようだ。しかし、0.5μm程度の細かい飛沫が飛び散って、雲のように室内を漂ってしまうリスクがあるようだ。最初にマウスシールドを見た時、「これじゃあ、透明な下着と同じじゃない?一応装着しているけど、逮捕だよね」と揶揄していたこともあったが、製造会社や富嶽のシミュレーションを見る限り、それほど酷いものではないことがわかったのは、収穫だった。

しかし、室内の記者会見で、語気を強めて30秒以上話すときは、マウスシールドよりも、不織布マスクの方が安全だと思った次第である。「直球」じゃなくて、「変化球」に注意ということだろう。上から流れ落ちてくる飛沫が心の目に映るようになれば、それは富嶽のおかげである。これで「感染経路がわからない」ケースは少しは減るのではないか(「会議中、マウスシールドをつけた人と30分ほど会話をしてしまった」という聞き取りがあれば「エアロゾル感染」とすればよい)。