jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

「英国由来の変異株」は静岡県のどこで発見されたのか?

英国由来の変異株(VOC-202012/01)が静岡県で発見され、その感染経路が「市中感染」の可能性が高い、ということで静岡県内は大騒ぎである。

だいたい、静岡県というのはとても広いところで、浜松のあたりはもはや名古屋に近い文化圏だし、伊豆半島や熱海などは関東と呼んでも良いだろう。また、大井川の東西でも文化圏は異なるし、そもそも静岡市の周辺をみても、御殿場、沼津、三島などとはちょっと文化圏が異なる感じがする。県内は、中部電力東京電力の両方が混じっていて、交流の周波数が異なる地域が混在していることからも、静岡県の複雑さがわかるというものだ。

とうことで、「静岡県内」で見つかった、と言われても、「静岡県のどこなのか?」というのは非常に重要な問題なのである。おそらく、伊豆半島は除外して良いだろう。

となると、かなり大雑把だが、静岡市なのか、浜松市なのか、それとも沼津市なのか、という感じになりそうである。

静岡新聞の記事によると、静岡市の担当者は「静岡市ではない」というニュアンスのコメントを出しているそうである。となると、浜松か、沼津か、という感じになるだろう。つまり、名古屋経由の感染ルートか、東京経由の感染ルートか、ということで大別できそうである。

www.at-s.com

浜松は、どちらかというとブラジルとの繋がりが強そうである。中部国際空港からの侵入経路が疑われるが、突然変異が報告されているのは羽田と関西国際空港である。

www.tokyo-np.co.jp

ちなみに南アフリカの突然変異501Y.V2が最初に見つかったのは成田空港だった。

www.asahi.com

さて、情報が錯綜する中、どれが正しいのか?予想を、静岡市浜松市沼津市、そしてその他に分けて、調べてみよう。

まず、変異型が発見された、と公表されたのがいつだったのか再確認すると、それは1月18日の午後8:43頃に、国立感染症研究所の所長が記者会見で明らかにしたのが最初だと思われる。

www.hokkaido-np.co.jp

 

続いて、午後9:45には静岡県が記者会見を行った。

look.satv.co.jp

PCR検査か何かで陽性が判明してから、感染研に検体が送られて解析が終了するまでにたぶん1日程度はかかるはずだ。となると、変異種に感染したことが判明したのは17日より前だと思われる。15-17日の間に公表された感染者の中からあぶりだせばよい、ということになる。

まずは、静岡市から見てみよう。静岡市の公表記録をみると、1月に入ってから感染が「爆発状態」になっていることがわかる。

f:id:jippinius:20210119225254p:plain

静岡市の感染者数の推移(静岡市のHPより)

クラスターが発生しているので、1/8-1/10上がりは50人近くの感染者が1日に発生しているが、1/15-17にかけてもそれなりの感染者が発生している。

1月16日は32人である。この中に、40代女性と20代女性、および60代男性が含まれているか確認してみる。20代女性は結構たくさんいるが、40代女性は一人だけである。この方は「静岡市」とあり、20代女性「静岡市」という欄もある。では、60代男性(静岡市)はいるだろうかというと、60代男性(葵区)という欄がある。一応、これで静岡市は候補の一つに入ることになった(少なくとも、除外はできない)。

次に1月17日の状況を見てみよう。全体で14人であるが、公表された中に20代女性、40代女性は見当たらない。一方、60代男性(静岡市)は存在する。非公表のデータの中に、「性別非公表、高齢でない成人」の欄が複数あるので、「明らかに除外できる」とはならない。

次は、浜松市を見てみたい。1月17日はわずか5人で、20代女性も40代女性も存在しない。1月16日は10人である。どうも、このところの感染状況は、静岡市よりは良いのではないだろうか?この日に「20代女性」は存在する。しかし、「40代女性」はいない。非公表の方が一人いるので、この方が仮に40代女性だとしてみても、60代男性が存在していない。非公表の方はこの日一人しかいない。以上より、浜松市で突然変異型が発見された可能性はかなり低いと思われる。

最後に、沼津市を見てみよう。1月16日は7人(高齢でない成人4人,高齢者1人, 未成年者2人)、性別は高齢でない成人に男女一人ずつだが、その他は非公表である。次に、1月17日は5人(30代男性2人、20代男性2人、20代女性)であるから該当しない。16日に非公表の人がやたらと多いのは気になるが、16日の結果なので少し確率が減る。また、全体の感染者も低めであり、英国の変異株が猛威を振るっていて心配、という感じにはなっていない。ということで、除外はできないが、沼津市である可能性は低いと考える。

ということで、静岡、浜松、沼津の中で、浜松は除外して考えていいだろう。また、沼津は除外できないが、感染状況や怪しいエントリーの有無から判断するに、候補とした3つの市の中では静岡の可能性が一番高いと思う

なんとなく見えてきたのは、愛知県に近い方からの感染の滲みよりも、東京、神奈川からの滲みの方が強そうだ、ということだ。とうことは、英国株は神奈川、東京から、静岡東部に侵入したと考えるのがより自然だと思う。

静岡市の可能性が高いということは、東京と神奈川には、すでに英国株が相当数侵入し、拡大している可能性が高いと考えた方がよいと思う。

東京と神奈川の感染者数の推移に、これまで通りに注目していきたい。(特に、神奈川の最近の医療崩壊のニュースは、英国株の拡大を感じさせる。)

 

(追記)関東からのアクセス、観光地ということで、熱海市伊東市の状況を調べてみたが、熱海市は感染者数が2人程度で少ないため除外できると結論。また、伊東市は10人ほどの感染者が出ているが、女性20,40代+男性60代の組み合わせがなさそうな感じで、これも可能性としては低いと考える。

 

(追記2)先ほどの報道で、感染研がゲノム解析するときは2週間ほどかかる、ということであった。ということは、1月4日,5日あたりの感染情報も見ておいた方がよいだろう。静岡市の1月4日の感染者は12人で、20代女性が二人感染している。片方の方は医療従事者であるが、濃厚接触者が4人いるので除外される。もう一人の方は、濃厚接触者が2人であり、候補となる。この日は40代の女性が発表されていないのだが、「高齢でない成人女性」の方が一人いらっしゃる。ただ、この介護従事者の濃厚接触者は3人いるので除外される。したがって、この日の記録を見る限り、静岡市ではないと思われる。1月5日には、40代女性が一人いるが、やはり濃厚接触者の人数が多すぎるので、除外される。この日の感染者は5人しかおらず、該当者は0であるから、除外される。

ということで、ゲノム解析に2週間かかる、という事実が正しいとすると、「静岡市は除外される」という結論となる。

このように、細かくあちこちのデータを確認していけば、次第に候補が絞り込めていくと思うのだが、今ちょっと時間がないので、これ以上の分析はできない....(また続報があったら、報告していきたい)。

 

(追記2)1月6日静岡市の感染者データに、「遺伝子検査にて判明」という方がいた。市内853例目の方である。静岡市の表記だと、(1)PCR検査で判明, (2)抗原検査で判明といった具合に、検査の種類が明確に書かれている。他の日に「遺伝子検査」というのがあるか調べてみたら、1月7日にお一人(市内880例目の70代女性)が「遺伝子検査」で陽性判明とあった。この方の濃厚接触者に、883例目の40代女性がいたが、家族構成を見ると、880番の高齢女性と二人暮らしのようだから、該当例ではない。調べてみると、12月30日から1月6日までの間で、「遺伝子検査」をした人は0人であるが、12月29日にお一人いらっしゃった。また、1月8日から1月15日までの期間にも「遺伝子検査」の人は0人であった。ただし、1月16日に一人いる(1106番)。そして1月17日以降も0人である。

どうも、静岡市は1週間から10日に一回、「遺伝子検査」を実施しているようである。これはPCR検査ではないし、もちろん抗原検査でもない。普通ゲノムを読み取っている検査と考えることができるから、これが「英国由来の変異種」を見つけることができた理由なのではないだろうか?(しかし、あくまで推測である。)

 (追記3)「遺伝子検査法」でググると、「LAMP法」というのがかかった。ただ、PCR検査を「遺伝子検査法」と呼んでいるところもある。つまり、場所や人によって「遺伝子検査」の定義が異なるようで、これは静岡市役所に聞いてみる他はない(今大変混み合っているようだが...)。

 

(追記4)国立感染症研究所の文書をみると、「遺伝子検査法」の中にPCR検査が含めてあった。したがって、静岡市の「遺伝子検査法」というのは「ゲノム検査」を意味するとは言い切れないようだ。したがって、依然として、静岡県のどこで英国株が見つかったのか?という問いに対しては「わからない」ということになろう。