jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

世界のワクチン接種の状況

英国で12月の初めに開始された新型コロナウイルス のワクチン接種だが、その後イスラエルでの接種が加速し、2月中にも「集団免疫」に到達する目標だということであった(イスラエルのリーダーは2月中だと宣言したという)。その続報が手に入ったので、ここにまとめておこう。

まずは、BBCの1月3日の報道である。

www.bbc.com

この段階で、イスラエルの接種率は12%であった。集団免疫の目安は、基本再生産数\(R_0\)の逆数を使って\[1-\frac{1}{R_0}\]と表現できる。\(R_0=3\)とする論文が多いので、集団免疫獲得に必要な接種率はしたがって66%、まあ大雑把に7割に到達したら目標達成と考えていいだろう。イスラエルのワクチン接種は12月19日に始まったそうだから、わずか10日程度で12%を成し遂げたことになる。単純な(線形近似)計算で予想すると、1.5-2.0ヶ月で集団免疫に到達できる。つまり、3月か4月頃には成果が出てきそうだということだ。これは注目に値する。世界で初めて、ワクチンを使って新型コロナウイルス を抑えることができるのかどうか、注視していきたい。

一方の英国はというと、2%弱だという。英国は12月8日からワクチン接種を始めたから、約1ヶ月での成績がこれである。この結果に基づけば、66%に到達するには3年弱(!)もかかる見込みである...これはなかなか大変だ。

米国は1%程度であるから、5,6年かかるという予測である...いずれにせよ、もう少し接種のスピードを加速していく必要があるだろう。

ちなみに、英国と米国の新規感染者がやっとピークを超えてきたように見えるのは朗報である。まずは、英国から見てみよう。

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英国の新規感染者の推移(報告日別):coronavirus.data.gov.ukより引用

第3波のピークは1月6日である。β=1/5(人/日)というデータを考慮すると、原因はクリスマスから年末年始にかけての「人々の会合」、いわばお祭り、パーティーであろう。ロックダウンが始まったというのも減少の理由なのかもしれないが、年が開けると「日常生活」が戻ってきて人の接触は減ってくるから、これが一番の減少の理由なんだろう。やはりお祭りやパーティーこそが、この病気の撲滅に関しての「癌」であることがよくわかる。

次はアメリカであるが、州によって状況が違うので、一絡げに「アメリカ」とするのはなかなか無理な点もあるが、統計上は一応出てくるので見てみよう。The Covid Trackiing project (NY times, abc news, washington postなどが引用しているデータソース)によると、下の図のようになっている。

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米国の新規感染者の推移(the covid tracking projectより引用)

米国のピークは1月8日であるので、事情はほぼ英国と同じであろう。ただ、大統領選挙に関する暴動やら揉め事などのせいで、感染が蔓延しているという話もあり、そこは英国よりも複雑な事情があるかもしれない。

 

次にABC newsを見てみよう。こちらは、1月17日の報道である。

www.youtube.com

1月17日現在、米国におけるワクチン接種の割合は3.4%だという。2週間前に1%程度だったので、接種のスピードは上がってきている。新しいデータをもとに集団免疫までの期間を計算すると、だいたい1年後に完了するペースである。1月初めの段階で5,6年かかるという予想だったから、この調子でいけば、来年の正月には見込みがでてきそうだ。

一方で、イスラエルの接種率は23.9%だという。BBCの1月はじめの報道に比較すると、わずか2週間で倍の割合になった。たしかにこのペースなら2月の終わりにも集団免疫までたどり着くかもしれない。ますます注目してみていきたいと思う。

さて、米国では、2回で完了するよう設計されたワクチン接種を、もともとの設計通りに実施することを宣言している(Dr. A.Fauci)。この状況は、設計を無視し、最初の1回をできるだけ多くの国民に接種させる方針を打ち出した英国と異なる道筋を歩んでいる(2回目は随分あとにするか、下手すると別のワクチンを打つやり方にするという)。

米国のやり方はもちろん正統的なのだが、このやり方だと急速に拡大している感染の速度に免疫獲得の速度が追いつかなくなる恐れもある。abcnewsによれば、現在までに2回の接種を終えた人は、108万人だという(その中には、abcnewsの医療解説担当のDr.Ashtonも入っているそうである。)英国では、VOC-202012/01という変異種が猛威を振るっているという特殊な事情があるため、王道ではないと知りながらも、「腐った巨神兵」を起動せざるを得ない状況となっている。一方の米国では、まだVOC-202012/01が猛威を振るっていない(侵入はしていて、少しずつ増えているという報告は毎日出てきている)。予想では、3月までにUK variantに入れ替わるということだが、それまでは2回セットのワクチン接種を行う余裕があるのかもしれない。

ただ、米国で変異種が猛威を振るい始めると、状況は変わってくるかもしれず、要注意である。

これは日本も同じである。今までと同じだと思っていたら、ある日突然感染爆発が加速する日がくるかもしれない。オリンピックを強引に開催するとなると、もしかすると、その恐怖のタイミングは7月以降になるかもしれない.....そうならないことを祈るのみである。