東京都の感染状況についての定例としている、「木曜日週間分析」を見てみよう。昨日の木曜日は最高値888人が報告され、(ある程度の)驚きが広がった。が、まだまだ、人々が「心の警戒レベル」を最高段階に引き上げている様子は見えないので、増加傾向はまだまだ続く感触である。
さて、まずは1週間毎の新規感染者の合計数をグラフにしたものを見てみる。
先週から、予測曲線(ガウス分布)を2つ重ねて表示している。濃い水色の方は、「人間」による直感的な予想グラフである。ピークの位置を1月15日ごろにセットし、高さを週の最高値が1000人程度と考え、週の累計値が5000人程度(毎日の平均が700人程度)と推測した場合である。今週の結果を重ねると、この推測によくあっているように見える。
一方、薄い黄色の方は、先週までのデータを用いて、数値的に最適化計算を行って得た予想曲線である。今週のデータを重ねると、この予想曲線は外れた、と結論して良いだろう。今週のデータを計算に含ませ、やり直したものが次のグラフである。
数値的に求めた曲線が、「直感的な」予想曲線に近づいてきたが、まだ過小評価気味である。これは仕方ないことで、ガウス曲線の特長の一つであるピーク周辺の「曲率」がまだ見えてこないからだ。計算上は曲率の効果を考えずに最適化するから、すぐにピークをこしらえてしまう傾向がある。しかし、人間の目で見ると、「まだピークが見えない」という判断となり、頂点を先へ送るのである。計算が威力を発揮するのは、曲率が見え始めた時の「ピークの高さの予想」である。おそらく、1月に入らないとその情報は手に入らないのではないかと思うので、しばらくは辛抱してみたい。
(ちなみに、注目していたGoogle AIによる予想曲線は、この2、3日ガックリするような「知的レベル」にまで低下してしまった...(馬鹿化?)よく言えば、学習効果がまだ安定していないようである。まだまだ、経験値が足りないようなので、「研鑽」を積んでもらうまで、その結果を使うのはもう少し待つことにした。)
もう一つの分析は日毎のグラフである。こちらも予想曲線と合わせてみてみよう。
予想曲線は以前と同じものを掲載した。濃い水色の曲線は第二波と同じ幅をもたせた上で、データの立ち上がりを合わせたものであるが、明らかに第3波はその期間が第二波よりも長くなりそうであり、この予想曲線はハズレ、ということがわかる。
黄色の予想曲線は、週間分析でやった「直感系予想曲線」と同じで、1月15日にピーク高900人と予想して作った曲線である。なんとなく、こちらの曲線にデータが乗ってきている感じがある。
第一波、第二波の予想をしたときは、大きく外してしまったが、今回は予想とよくあっているな、という感想である。東京都民の「人間的な意思」が消え始め、ブラウン運動理論に合致するような「サンプル」になり始めているのではないかと考える。つまり、意思を持って行動する「知的生命体」から、自然法則に単純に従う「質点」に変容しているのではないか、ということである。
この1週間の増加傾向を見ると、どの曜日も同じような伸び率で増加していた。この伸び率に従って予想すると、本日金曜日は700-750人程度になりそうである。これを上回ると、最悪の事態に向かって走り始めたことになるだろうし、これを下回るとようやく「自粛呼びかけ」に都民が応え始めたということになるだろう。個人的には、「予想通り」になると思う(上回りも下回りもしないということ)。
これだけの勢いで感染者が増えていると、東京の医療体制はいよいよ崖っぷちのはずだ。第一波のとき、感染爆発が発生する目安として、「1日の死者が10人を超えること」という仮説を立てた。春先や夏に日本や東京にこれを当てはめたときは見事に失敗したのだが、第3波では世界各国と同様、市民の「質点化(物質化)」が都民にもみられるので、もしかしたら、今回はこの指標がそれなりに当たってくる可能性がある。
日本全体では、まだまだ「知的生命性」が高いので、この仮説は成り立たないと思うが、都民に関しては成り立つかもしれない。ということで、東京都に注目して死者数を数えてみると、12月23日が10人、24日が9人となり、現在「耐えている」フェーズに見える。カナダの分析をしたときは、「10人前後で行ったり来たりして、なんとか耐えていても、10人を超えてしまうといずれは爆発してしまう」という結論であった。これから1週間は、東京の死者数から目が離せない状況である。
日本全体での死者数は、おととい最高値を更新し56人が記録された。昨日は54人で2番目に高い記録である(が、報道ではまったく注目されなかった)。この感じからすると、日本全体で「感染爆発」が起きるのは、死者が100人/日を超えるあたりではないかと、(かなり大雑把ではあるが)予想してよい気がする。
英国と南アフリカで発生した、感染力の強い新型には最大限の注意が必要だろう。こいつらが入ってくると、負の意味で"Game changers"となりうる。トドメを刺されないうちに、日本政府は科学的で知性のある対策を全力で行うべきだろう。(全力で虹のポスターを街中に貼り付けたり、全力でマスク会食に参加したり、とかそういう非科学的、根性論的な対策はもうやめようじゃないか、と叫びたくなる人は多いはずである。)
「感情を持った物理学者」であるメルケル獨首相の演説は世界中で賞賛されていて、彼女はまさに「科学的で知性のある対策を全力で」行なっている。これと日本の総理大臣を比較するのは「かわいそう」とか「あそこまでのレベルを期待するのは、まあ無理だとしても」などと言われているのは、実に恥ずかしいことである。