jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

感染経路の情報が少しずつ出てきた

 

「現在調査中」と書かれた「白塗り」資料

政府も自治体も、具体的な感染経路についての情報をほとんど公表していない。市中感染の存在も長く否定してきたが、「経路不明者」が50%を超える状態が常態化し、「(経路が追える)クラスター感染だけしか日本では発生していない」という主張を繰り返すのはもはや難しくなってきた。つまり、政府の立場は「感染経路を追えるものしか感染経路を発表しない」ということである。感染経路の「可能性」しかわからない場合には、(おそらく「不安を煽る」とかいう理由で)公表に消極的である。こういうのを「隠蔽体質」というのである。

戦争中の日本軍政府がまさにこれであった。「そういう過ちを2度と繰り返すな」という教育を受けてきた戦後の世代だったはずだが、どうも「絶滅」してなかったらしく、それどころか知らぬ間に「クラスター感染」の連鎖によって今や日本の政治と行政の中枢は、こういう「隠蔽体質」の遺伝子を持ったウイルスのようなものが爆発的に増殖している気配である。

東京都の感染報告では、「白塗り」の情報を儀式のように続けている。こういうのは「隠蔽体質」のみならず「無駄」とも呼ぶ。

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東京都の感染「情報」資料(12月22日のもの)

「現在調査中」とあるが、これが「調査終了」となることは永久にない。4月17日のデータを閲覧してみたが、予想通り「現在調査中」となっている。(ちなみに、3月のデータを閲覧してみたら、データそのものが削除されていたものもあり驚いた。「現在調査中」という言葉が本当は何を意味しているのかが滲み出ている。)

最近、なんとかして感染経路の可能性を追跡しようという試みがマスメディアにも見られるようになった。当局が認めようと認めまいと、「市中感染」が日常茶飯事となっている今、自衛手段としてこの情報はどうしても知りたい、と感じる人が増えているのだろう。

まずは、朝日新聞の取材記事から見てみよう。

千葉の大学生の事例

感染のかなり初期、つまり「第一波」の時だったと思うが、都内のアルバイト先に通勤していた千葉の大学生の事例があった。この学生への取材を基にした記事が11月に朝日新聞から発表された。そこには、感染場所の可能性が書いてあった。

そこには、「満員電車の中で感染した可能性がある」と指摘されていて、非常に驚いたのである。これまで「満員列車でもマスクなどの対策をとれば感染しない」とぼんやり思っていたのだが、もしかすると大規模な「印象操作」キャンペーンに、我輩も見事に引っかかってしまっていたのかもしれない。

www.asahi.com

この20代男性は千葉出身ではなく、千葉の大学に入学したのを機に、地元を離れ千葉で一人暮らしをしていた。感染を警戒し3月半ばから2週間ほど家から出ないように努力するなど、慎重な性格な持ち主だという。

一人暮らしの学生の多くは、アルバイトによって生活費を捻出している。この千葉の学生も3月28日、とうとう東京都のアルバイト先へ、満員電車に揺られて仕方なく出向くことになった。行きと帰りの列車に乗ると目がかゆくなり、何度も目をこすってしまったことを覚えているという。春先の花粉症シーズンであった。

3月半ばから家に閉じこもり始め、4月1日に発熱するまでの間に外出したのは、結局このアルバイトへの1回だけであったという。

飛沫が満員列車内の手すりや吊り革などに付着し、それを触った手で目をこすったのが「感染経路の可能性」ということになろう。満員列車の中でマスクを着用していたかは新聞記事には書かれていないので、エアロゾル感染の可能性もあろう。いずれにせよ、満員列車の中で感染した可能性が非常に高い、という「情報」がこれでやっと伝わったてきたのである。個人的に対策を立てるよう強制されている現況では、非常に重要な情報である(社会的な対策、例えば紫外線照射による殺菌システムなどはまだあまりないわけである)。

しかし、こういう記事に対し、「検証もせず、不十分な内容のまま、煽るようなことをいうな」という声が聞こえてきそうである。多くの一般人がこういうのを「風評被害」と呼び、その意味を取り違え誤用するケースが増加しているが、先日報道番組で見た、リスクマネジメント(危機管理)の専門家の説明によると、「疑わしきは罰せよ」が危機管理の基本なのだという。平和慣れし、過度に楽観的に考えてしまいがちな集団は、実際に危機が発生すると、右往左往してなにもできないらしい。(そういえば、最近のgotoキャンペーンの「店じまい」の理由を説明する政治家たちの目が泳ぐ様子に、そんな感じを受けなくもないし、太平洋戦争のとき、敗戦を天皇が決断するまでの議論過程を学ぶと、まさに「右往左往」という感想を持つだろう。)

ちなみに、この記事のそもそもの主題は「後遺症」であった。この20歳前半の大学生は、いまだに後遺症で苦しんでいるそうである。

政府の分科会が明らかにした例

このところの鈍重な政府の動きに業を煮やしているのが、医師会などの医療関係者の集団であるが、政府分科会の尾身会長も多少なりとも「イラついている」のがよくわかる。Gotoキャンペーンが停止となり、「会食のススメ」を擁護する必要がなくなったせいなのかはわからないが、最近は「エビデンス」はないにも関わらず「会食が急所だ」ということで、少しずつ情報がリークされてくるようになった。

今回の分科会の報告は、簡単な記述で朝日新聞で報道されているが、「ショッピングモールのフードコートでの感染例」についての事例があったという。やはり、「市中感染」は人混みの中で(食事や会話などを介して)発生していたのである。

www.asahi.com

 Gotoキャンペーンでの感染事例

Gotoキャンペーンにおける感染事例は、数多く発表されているが、「直接の因果関係は証明されてない」と多くの人が口を添える。では、「状況証拠」をたくさん例示してみようじゃないか、ということになるだろう。そういう話を見つけ次第、このセクションに付け加えていくことにして、まずは東大の若手研究者が統計学的に分析した論文を記録しておこう。これはまだプレプリントではあるがメディアで広く紹介された。(英語で書かれた原文に関しては以前の記事で簡単に取り上げた。)

 

healthpolicyhealthecon.com

大谷先生のクリニックの事例

数日前の「モーニングショー」(テレビ朝日)で紹介されていたのが、池袋の「大谷クリニック」での事例であった。

友人4人で乗用車に乗って泊りがけの旅行に行って感染した事例である。運転手と助手席に乗っていた二人は感染しなかったがが、後部座席二人が感染した。聞き取りによると、前の席に座っていた二人はマスクを着用していたが、後部座席の二人はポテトチップスの袋から直接手づかみで食べていたという。食べているときはマスクは外していたわけで、その間会話がなかったとは言い切れないだろう。楽しい旅行の道中で、何も喋らず、ポテトチップスをかじるだけ、というのはちょっと想像しがたい。

面白いのは、前席の二人に感染が広がらなかった点である。大谷先生は、「マスクの効果です」と言い切っていた。これは非常に有益な「感染経路情報」であると出演者も評価していた。

 

もう一つの事例が紹介された。それは「夜の会食はしてないが、昼間のランチ(一人で、あるいは同僚と行くタイプのランチ)は行っていた」会社員の感染である。一般に、お酒を伴う飲食では飛沫が飛びやすく感染の原因となると広く信じられているが、大谷先生は、「酒の有無は関係ない。夜昼も関係ない。集団で食べること自体にリスクが発生する」とおっしゃっていた。つまり、ランチでも感染は広まるのである。

一人でいっても、隣に集団のテーブルがあってベチャクチャ喋っていたりしたら、感染のリスクは高まる。実際、上にも書いたが(分科会のコメントとして取り上げた朝日新聞の記事)では、ショッピングセンターのフードコートでの感染が報告されている。フードコートで酒を飲む人はあまり見たことがないし、だいたい夕食というよりは昼食での利用が多い場所だという印象が強い。