jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

山中先生のXファクター:諦めムード?

久しぶりに(京都大学の)山中先生のホームページを拝見した。iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞したすごい先生であると同時に、最近は、日本人が新型コロナウイルスに(欧米人と違って)あまり感染しない謎の理由があるはずだ、という「Xファクター」仮説の提唱者としてもよく知られている。

Xファクターの候補として、BCG予防接種の効果とか、交差免疫の可能性とか、興味ある様々な説が山中先生によってこれまでに提案されてきた。しかし、BCGに関しては最近まったく聞かなくなったし、交差免疫の話も決定打というわけではなさそうである。研究が進むにつれて、当初提案された多くの仮説が淘汰されていったというわけだ。

山中先生もこれらの仮説に関して自己評価をつけていらっしゃって、どちらも「Xファクターとしては有望ではなくなりつつある」という判断を書かれていらっしゃる。

では、今現在、山中先生が考える、最も有望なXファクターの候補なにか?!というと...なんと「マスク」である....日本人の習慣として、マスクをつけることに抵抗を示さないのがXファクターだという説である。うーむ......富嶽のシミュレーションのことは知っているが、これが「日本人と欧米との違い」と言われると少し脱力感を感じるのだが。

 

www.covid19-yamanaka.com

結局、今の所「生理科学的、あるいは分子生物学的な科学では説明つかない感じ」という結論になるのであろうか。個人的には、確かに「マスク」はXファクターの候補であることには賛成である。しかし、このどちらかというと「物理的な」説明は、科学の真髄を理解しない人々とだいたい同じ到達点に見えてしまうので、これが「主要因」であることに違和感を感じる。

もしファクターXが存在するならば、なによりも一番大きなのは日本人の「引きの速さ」ではないかと思う。自粛してくれ、と要請されれば素直に聞くし、新規感染者数が増加してくると強制力なしに自分からロックダウンをかけてしまうし、とにかく「逃げ足の速さ」が抜群である。その上、同調圧力というのがあって、誰かがやりだすとそれに追随するのが見事である。

結局これらは、「社会的距離」という観点から「科学的」な解釈可能であり、これはSIRモデルの感染率βの減少に役立っていると思う(これも物理的な要素であることには違いあるまい...)。しかし、この要素に関しては最近憂慮がある。感染爆発の可能性についての予言が繰り返され、それが「ペーターの狼」状態のように捉えられている気配があるのだ。人々は「緊急事態宣言」にあまりピリピリしなくなってしまっている。こうなると、βへの応答速度が悪くなり、感染の指数関数的な増加に負けてしまって、欧米のような臨界値を超えた「感染爆発」に到達してしまう確率は高まっていると感じる。

しかし、マスクをつける習慣がないはずのニュージーランドで感染が抑えられていることや、台湾、韓国、そして現在の中国のように徹底的な検査と追跡で押さえ込んでいる国々に比べれば、日本の今の感染規模は「かなりまずい状態」であること、また、最近ではオーストラリアは感染の押さえ込みにかなり成功しているというのもあり、これらの成功例を見れば、必ずしも日本人だけが優れているようには思えない。これらの国々の「ファクターX」はマスクではないと思う。加えて、日本の第3波の様子をみると、「日本人だけ感染しにくい」と主張することに若干の違和感を感じるのである。もちろん、日々の死者が40人程度で飽和してしまい、これ以上の数字にならなければ再考も必要だろうが、100人/日や200人/日の死者が発生したら、もはやファクターXという概念は存在しなくなると思う。

最近の日本における(新型コロナウイルスによる)死者数をみてみると、感染が始まった2月以降で「最多レベル」に達してしまっている。欧米のケースではこの後「弾けて」感染爆発へと突き進んのであるが、果たして日本は(第1波のように)再び踏みとどまることができるのか、それとも結局は欧米のようになってしまうのか?注目である。

 

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第1波と第3波の死者数(全国):(NHKのデータを参照して作成)

日本政府は、「感染者は検査を多くすれば増えてしまうのは当然(だからあまり気にするな)。大切なのは、死者や重症患者を出さないこと。経済を締めると自殺者する経営者も増えてしまって、新型コロナウイルスの対策としては元も子もない結果となってしまう。死者が増えない程度に、経済を回していこう!」と掛け声をかけてGotoキャンペなどを推し進めているが、結局第一波と同程度、あるいはそれを超えてしまうようなレベルまで、人の移動を通じて国内に感染を広げてしまった。死者も重傷者も第一波を上回る「最悪ペース」の感染増加を最近は記録している。果たして「ファクターX」の行方はどう決着がつくのだろうか?