jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

スーパーコンピュータ「冨嶽」を使ったシミュレーションNo.2

先日(密かに)リクエストした、「冨嶽」を使ったマスクの効果を検証する新しいシミュレーションが本日公開された。まさかこのブログを読んでいるとは思えないのだが、リクエストした内容にかなり近いシミュレーションをやってくれたので、とても感謝している。

興味があるのは航空機の前後の席に座る二人の乗客についてである。先日公表された航空機内の感染では、前席から後席の乗客へ感染が伝播した。そんなことが可能なのか不思議に思ったので、「こういうのはまさに冨嶽でシミュレーションをすべき」と提案したのである。

新しく公開された計算はマスクの効果なども検証しているが、その最後の計算に劇場における飛沫飛散の様子を調べたシミュレーションが紹介されていた。多少、配置は異なるが、似たような状況なのでとても参考になった。

 

www.news24.jp

「アベノマスク」というあだ名がついた布マスクについての効果が「あまりない」という計算結果を最初に公開している。すばらしい。理研の研究者もついに忖度しなくなったようである。

次に、不織布のマスクについてはマスクを透過する飛沫はほとんどないが、マスクの上辺、つまり鼻の脇から眼球の方へ抜ける隙間から飛沫が漏れ出てしまう様子が計算されていた。顔の表面に沿って飛沫粒子は移動し、上方へ跳ね上がる様子がよく再現されていた。まあ、計算しなくてもだいたいこういう感じになるのは実感としてわかる。

これらの結果を踏まえ、最後の計算、つまりマスクをした人が劇場でくしゃみをしたときに、飛沫が後席へと飛び散る可能性についての検証である(理研グループによるこの計算の本来の目的は、マスクの有無よって飛沫の拡散範囲が抑えられるかどうか、ということであるようだが、我輩は違う目線でこのシミュレーションを利用するのである)。

最初のケースは、マスクをしていない人がくしゃみをした場合である。この場合、飛沫は前方へ飛んでいく。つまり、後席の人が感染するリスクはかなり低い。

ところが、マスクをつけた場合、クシャミをすると(さきほどのシミュレーションの結果からわかると思うが)前方への透過が抑えられた分だけ、鼻から眼球にかけての隙間を伝って飛沫が頭部上方へ「跳ね上がる」動きを見せるのである。そして、頭部の緩やかな曲面に沿って、後方へ散っていく様子が確認できる!上に跳ね上がるため、背もたれが遮蔽の役割を果たさない可能性が推測できる。そして、噴水のように跳ね上がった飛沫は「上方から後席の人に降り注ぐように」舞い散っていくのである。

つまり、飛沫を透過しない「良い」マスクをしたが故に、前席から後席へと飛沫が逆流飛散して、感染を誘引する可能性があるということなのである。これはある意味驚きであった。

もちろん、今回の理研のシミュレーションは劇場を想定した配置なので、厳密には飛行機内における感染メカニズムのシミュレーションにはなっていない。しかし、飛沫が飛散する様子を見る限り、同じようなこと(「噴水メカニズム」)が起きる可能性は高いと思われる。

もう一つ面白い計算があった。フェイスシールドのシミュレーションである(これも我輩が密かにリクエストしていたテーマである)。当然ながら、前方への飛沫拡散は完全に抑制(シャットアウト)される。ところが(皮肉にも)それが故に、シールドの下、および脇から横、あるいは後方へ抜けるルートに沿って、勢いよく飛沫が流れ出る結果になっていた。つまり、フェースシールドをつけた人の後ろや横にいる人は要注意だということである。

よく、政府の記者会見などで、大臣がフェイスシールドをつけて「颯爽と」会見するその真横で手話通訳をする人がいる場合を見かける。理研のシミュレーションに従うならば、この配置は非常に危ないと思われる。一番安全な配置は、大臣の真ん前に立つことであろう(😜)。