jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

東京の倍加時間の予想


昨日、とうとう東京の感染者が100人を超えた。そして先ほど、本日は124人であるという報道があった。

初期における感染者増加は指数関数的に増加するので、倍加時間の概念が利用できる。

加えて、東京都も日本政府も強い行動制限を出さない、といっているので、自粛とか休業要請とか「計算上は面倒臭いこと」が起きず、(あくまで)数理理論的な観点から「理想的な状況」が続くはずなので予測はやりやすいだろう。

ちょっと前に、大阪大学原子核理研究センター(RCNP)のセンター長である中野貴志氏が提案したK値という概念がある。これは、日本の感染者の数は曜日によって増減が激しすぎて科学的な分析データとして使いにくい、ということから、「1週間の平均値」を利用する、という提案である。このように感じた人は結構多くいて、K値以外にも、多くの分析で、週間平均値を使う研究者が最近増えている(ちなみに、我輩も周期7日でPCR検査数が振動する現象を指摘したことがある)。

ということで、1週間を単位とした感染者の増加傾向を分析して倍加時間を算出してみたいと思う。これは実に簡単で、エクセルにデータを代入し、予想曲線を指数関数を指定してフィットするだけで良い。

まずスタート地点は「東京アラート」と言われたものが終了した日を選ぼう。すなわち、6月12日である。この日に発表された東京都の感染者の数は25人であった(解除されたからといって、決して少なかったわけではない...)。計算を行うと、

\begin{equation} N(t) = 138\cdot 2^{(t-1.168)/1.49}\end{equation}

 という関数系でフィッティングできることがわかった。

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東京における6-7月の新規感染者数の推移

倍加時間は1.49週間、すなわち10.4日であると算出された。つまり10日経過するたびに、新規感染者の数が2倍に増えるという予想である。\(138=2^{10.6/1.49}\)なので、この結果を代入すると

\begin{equation}N(t) = 2^{\frac{t+9.42}{1.49}}\end{equation}

となる。つまり、感染の倍々ゲームは東京アラートが終了した9週ほど前から始まった、という計算結果であるが、それは4月10日である。緊急事態宣言が終了したのが5月25日であるから、この数字は現象の解釈には対応していない...

理論曲線ができたので、来週、そしてその次の週の予想をしてみよう。来週1週間の感染者の数は820-830人と推測される。今日を含む今週7日間の総計は527人だったので、来週は、おそらく1日に200人近くの感染者が発表される日も出てくるであろう。

その次の週は1320-1330人となる。1日の平均としては190人程度となる。ということは1日の新規感染者の数が250人とか300人を伺うような日もでてくるかもしれない。

さて、現在東京都の病床は3000床あるから余裕だということであるが、2週間後の感染者の増加分は2150人と予想されるので、あっという間に埋まってしまう計算である。指数関数的増加というのは、ぼんやりしているとすぐに手遅れになるのが怖いところである。

政治家たちは「様子を見る」といっているが、おそらくあと2、3日くらいしか余裕はないと思われる。専門家がこの状況に耐えきれなくなって「直訴」する可能性があるから、その意見を聞き入れる懐の深さを政治家たちがまだ持っているとするならば、もしかすると「第二回非常事態宣言」はこの週末にも出る可能性がある。

 

注:本来、倍加時間というのは患者総数\(\mathcal{N}(t)\)に対して適用される概念であるので\begin{equation}\mathcal{N}(t)=2^{\frac{t}{T}}\end{equation}と書くべきものである。\(T\)が倍加時間である。我々が考えた新規感染者の数\(N(t)\)は、この量の微分であるから\begin{equation}N(t)=\frac{d\mathcal{N}(t)}{dt}\end{equation}と考えるべきである。計算すると\begin{equation}N(t)=\frac{\ln 2}{T}2^{t/T}=\frac{0.693}{T}\mathcal{N}(t)\end{equation}となるから、比例係数を除けば同じものである、と言って良い。

ただ、この係数の存在は若干気になるのは確かである。その効果を確かめておこう。今回のデータ分析により\(T=1.49\)であることがわかっているので,比例係数は約0.465程度と算出される。\begin{equation}0.465 = 2^{-\frac{1.65}{1.49}}\end{equation}なので\begin{equation}N(t)=2^{\frac{t+9.42}{1.49}}=2^{\frac{t+11.07-1.65}{1.49}} = 0.465\cdot 2^{\frac{t+11.07}{1.49}}\end{equation}となる。

したがって、最初の理論では「感染の拡大が始まったのを9-10週ほど前」と推測していたのが、理論修正によって「15週ほど前」という値に変更され,なおさら現象に直接は対応していない数字となった...(ということで、単なるデータフィッティングになってしまった...)。