jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

オンライン講義の様々な試み:Google Classroomの場合

Google Classroomとは

4月の初めに次のような報道があった。

「zoomを用いてオンライン講義を始めた韓国や米国では、講義中で嫌がらせが多発し、大問題に」

というものである。この報道を受けてzoomを諦めた大学が飛びついたのが、Google Classroomだ(両方契約している大学も多いかもしれないが)。

もともとはG suiteという、クラウド環境にオンラインアプリの集合体を置いたサービスで、ネットに繋がっていればどこでも仕事ができる、という提案だった。それを遠隔授業に応用したのがG suite for educationであり、大学がオンライン講義に利用しているのもそれである。

G suite for education

G suite for educationには、いくつかのWeb applicationが含まれている。その主力になるのがGoogle Classroomであるが、このアプリケーションを覗いた人は「なんだこれは、掲示板か?」と思ってしまうだろう。つまり、zoomのような動的な(リアルタイムな)講義ではなく、資料や文書を好きな時に読んでください、という静的(オンデマンド)なタイプのサービスだと感じる人が多いのではないか、ということである。

たしかにその通りなのだが、ここからがG suiteの本領発揮である。つまり、G Suiteに含まれる様々なアプリを組み合わせていくのだ。たとえば、動的な講義スタイルを好むのであれば、Google Meetというビデオ会議アプリケーションをGoogle Classroomに融合させるのだ。これにより、ビデオで講義しながら、資料を読みあわせたりすることができる。zoomと違って、テストの提出/採点/返却や、アンケートの提出/分析はGoogle formsを組み合わせてやることもできる。また、Google Sitesを持ちいれば、ホームページの資料を見ながら講義を進めることもできる。オンデマンド型を希望するなら、Google Slidesに解説音声と資料画像を組み込んで自動プレゼンテーションファイルを作ってもいいし、MS Powerpointで作ったファイルをmp4に変換してGoogle classroomに置いておけば、オンラインレンタルビデオ屋ならぬ、オンラインレンタル講義システムにすることもできる。

ところが、この自由度の高さが裏目に出て、何をどうやったら良いのか戸惑う、という感想を持つ教員が多いらしい。しかも、それぞれのアプリケーションには様々なバグがあって、思った通りに動いてくれないので、一層、混乱の深みにはまるのである。

 PC/maciPhone/iPadの違い

もう一つ、混乱に拍車をかけているのが、PC/macのようなデスクトップ/ノートブック系のいわゆる「コンピュータ」と、iPhoneiPadなどのいわゆるスマートフォン系の情報端末とで、G suitesの振る舞いがときどき大きく異なる点である。後者の方が、相性が悪く、ファイルが見えなかったり、音声がならなかったりして、トラブルの大きな原因になっている。多くの大学では、このトラブル解決に相当の労力を割く結果となり、教員や職員の疲弊を誘発している可能性がある。

なぜこのような問題が起きているかというと、G suitesの中に含まれるWebアプリケーションはブラウザで作動するため、ブラウザの種類やバージョンに大きくその機能が依存し、制限されてしまうからである。G suitesの説明にも、Apple SafariやMS Edgesには対応していない、と書いてある(ところが、Apple Safariは結構な確率でちゃんと動く...動かないものもあるのは確かだが)。この但し書きが意味することは、もうおわかりだと思うが、Google Chromeを使ってね、ということだ。

知らないうちに、世界のブラウザシェアのトップに躍り出たChromeは、多くの人にとって問題ではないかもしれない。しかし、iOSをデフォルト設定でしか使わない人にとってみれば、大きな壁なのである。Google Chromeを忌み嫌う、Apple信者たちはSafariしか使いたくない、とおもうだろう。実は、我輩もGoogleが一人勝ちするのはあまり嬉しくないのである。だからこそ、blogger.comはやめて、hatenablogを選んでいるくらいである。

信者はさておき、一般の人々はせっかく使えるものがあるのに、それをあえてやめて、新しいアプリを試してみようとは思わない。しかし、新しいアプリを0から使え、と言われれば、疑問なぞ持たず素直に応じるだろう。iPhoneiPadで、「Google classroomを利用するためには、アプリを新規インストールしてください」と言われたら、多くの人がそれを実行する。そして、それこそが、まさに問題の元凶なのである。

アプリ版のGoogle Classroom

iPhone/iPadを使ってオンライン講義に参加する学生は、経済的に余裕があまりない学生が多いことがわかってきた。学習にもあまり積極的ではなく、なんとかコスパ良く、少ない労力で単位を稼ぎ、大卒の肩書きだけが欲しいという人も多い。後者は、「PCなんて金の無駄」と思っているのかもしれない。オンライン講義が隆盛になった今、落ち込んでいたPCの売り上げが上がってきたと聞く。

カリフォルニア工科大学のオンライン講義のデモビデオをみると、オンライン講義を受ける学生は皆ノートPCで受講している。

www.youtube.com

オンライン講義では、レポートを書いたり、学生同士のチャットで意見交換したりするので、キーボードのない情報端末を使う学生は不利な立場になる。たくさんの言葉を書くためには、どうしてもPCが必要なのだ。

したがって、情報端末やスマートフォンでオンライン講義を受講する学生は、世界的には少数派ということになる。ソフトウェアの出来具合というのは、多くの場合、出来上がったばかりの新製品には期待できないものだ。バグは必ず存在する。たくさんの人に利用してもらい、そのバグレポートに真摯に応対することで、少しずつ品質や信頼性が向上していくものだ。したがって、少数派である、情報端末のアプリにはバグが多いということになる。

よく知られたバグの代表が、音声データの処理のバグである。iPhoneiPadといったiOS用に開発された「Google Classroom」という名前がついたアプリは、G suiteで作ったフィイルをきちんと開けないことが時々発生する。なかでも、Google Slides(プレゼンソフト)に音声データ(MP3など)を貼り付けて、オンデマンドの講義ファイルを作ったときに、「音声データが開けません」というエラーが出る症状が知られているが、いまだに修正されていない。海外でも、この問題は少しずつ注目されているようだが、いかんせん、使用者が少ないのであまり大きな問題にならないのだ。

この問題を解決する方法が一つある。それは、iOS用に開発されたG Suiteのアプリを全て削除して、Google Chromeに切り替えることである。Chromeもアプリの一つには違いないが、その基本部分はあらゆるOSで利用でき、世界ナンバーワンのシェアに支えられた人気ブラウザであるから、バグフィックスが徹底的になされていて、信頼性が高いのだ。

G suiteのサービスとしてのGoogle Classroomと、iOS用のアプリとしてのGoogle Classroomは同じ名前なので、混乱してしまうことも多いのだが、後者は単なるiOSのアプリの一つである。前者はどんなOSからでも利用できるWebサービスである。

したがって、バグの多いG suite系のアプリは使うのをやめてしまい、すべてChromeの中で作動するWebアプリを利用すれば、PCとほぼ同じ環境となる。唯一代用できないのが、Google Meetだ。ビデオ会議システムであるが、これだけはiOSChromeの内部で作動させることができず、別にMeetというアプリをインストールする必要がある。

一方で、google sliedsとかGoogle spradsheetなどのG suiteアプリについては、iOS用のアプリが開発されて存在するのだが、これらを利用する必要はまったくない。iOS用のChromeの中で動いてしまうのだ。

まとめ

G suiteに含まれるサービスとしての「Google Classroom」でオンライン講義を行っている大学では、PCを利用する場合も、スマートフォンタブレット端末を利用する場合も、ブラウザをGoogle Chromeに統一し、そこからClassroomを利用すると問題が少ない。特に、スマートフォンタブレットの場合、G suite系のアプリを利用することは避けて、iOS用のChromeの中からClassroomを利用するとトラブルを避けることができる(ただし、Google MeetをiPhone/iPadで利用するときだけは、別途アプリを入れる必要がある)。

オンライン講義が始まる前は、表計算ソフトはmacに無料でついてくるNumbersを主に使っていたが、あまり賢くないので最近はMS Excelに戻っていた。しかし、G suite for educationでオンライン講義をやることになり、Google spreadsheetなどというものを使い始めることになってしまった。keynotepowerpointについても同様で、google slidesなどというものがあることを知ってしまったが故に、online講義ではそれを使い始めている。みごとに、Googleの戦略にはまってしまった形で、非常に癪である。が、その親和性の高さは無視できない。

個人的に、Google Classroomは使い勝手が悪く、嫌いである。Meetも、Classroom breakout(少人数のグループに分割する機能)がないし、共有画面の設定が甘くて使いにくい。さらに、iPadとの親和性が弱いので、Apple pencilを用いた「電子黒板」風の講義がやりにくい(不可能ではないが、Quick Time Playerを中間に噛ませなくてはならない)。できれば、早々と撤退したいところだが、ひとつ無視できない高機能がある。Google App.Script、すなわちGASと呼ばれるプログラミング言語だ。これを利用すると、G suiteの制御のためのスクリプトを書くことができ、様々な処理を自動化することができるのだ。Zoomにはこういう機能はない。

完成度が低い分、将来性に望みがあるのがGoogle Classroom(G suite for education)ということになるだろう。したがって、まだ無視することはできないのである。