jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

新型コロナウイルスの感染経路の考察:ウイルスの残存時間

新型コロナウイルスの感染力は非常に高い。しかし、それは絶望的な高さではなく、人間の不注意によるものが大きい。しかし、ここがまさに盲点だ。つまり、習慣はすぐには変えられないということだ。目をこすったり、口元に手を当てたり、鼻をほじくったり、とさまざまな癖を人間はもっているが、コロナウイルスはここにつけ込んでくるのだ。

したがって、自分の癖を分析し、ロボットのように無駄な動きを抑え込めば、新型コロナウイルスにはなかなか罹患しない。実際、治療を行なった病院の中には2次感染がまったく発生していない病院も存在する。

なぜ顔を手で触るといけないのか、というと、コロナウイルスは扉や手すりなどさまざまな物体の表面に長時間残存しているからだ。手で扉などを触り、癖によって目や鼻などの粘膜にウイルスを刷り込む...これがこのウイルスの感染経路の一つだ。

また、くしゃみや咳などによって、唾液に包まれた飛沫やエオロゾルに包まれて空間を漂うコロナウイルスも、想像以上の長時間にわたって活性を維持するという。(ウイルスは「生物ではない」ので、「生きている」とは言わない。コロナウイルスの場合、表面にあるスパイク状の突起が壊れているか、壊れていないかによって、活性が失われたり、維持されたりする。活性が維持されると、コロナウイルスはACE2や粘膜細胞を乗っ取りながら人体細胞へ侵入し、そのRNAを人間の細胞内にあるリボゾームにつくらせることによって増殖を開始する。乗っ取られたリボゾームは自身の細胞が破裂するまでウイルスを作り続けるのである...)

重要になってくるのは、ウイルスが外界に飛び出した時に、その環境でどのくらいの時間に渡り活性を維持できるか?という情報だ。「活性を維持する」という状況を科学者は「安定(stable)」と呼んでいる。この研究は最近アメリカの研究者が行い、その成果は日本のメディアでも広く紹介された。ここで、その内容を復習しておこう。

研究を行ったのは、(米国)国立保健機関(NIH),カリフォルニア大学ロスアンゼル校(UCLA), そしてプリンストン大学である。研究の成果は、The New England Journal of Medicine に掲載された。

まず、エアロゾル中には3時間程度、安定的に残存できる。

金属の銅の表面には4時間程度、

ダンボール紙には24時間(1日)、

プラスチックやステンレスの表面には、2、3日安定的に残存しているという。

実は、この性質は、以前流行し、現在絶滅した(と考えられている)SARSとまったく同じだという。分類学的にはSARSという病気を引き起こしたウイルスの名前はSars-CoV-1という。一方、今回のCOVID-19という病気を引き起こすウイルスの名前はSars-CoV-2という。両者の構造はほぼ同じで、たとえば、ACE2に取り付くスパイク状の突起を決定するRBD(Receptor Binding Domain)に関しては、アミノ酸が一個分だけ長いかどうかの違いしかない。

以上の情報を知れば、基本的には、外出した時に触ったものは、すべて汚染されていると考えて良いだろう。たとえば、駒澤大学駅や東中野駅の近くのスーパーマーケットで店員が感染した、とかいう事例を考えてみよう。このお店を訪れた感染者は食品などの商品を手でまさぐり、その結果、包装やパッケージの上にウイルスが活性を維持したまま残存してしまう。直後に棚の整理などを通じて店員が商品のパッケージに触った時、その手にウイルスが移ってしまう。その直後に、この店員の癖で、目をかいたり、鼻をほじるなどして、粘膜に手で触り、ウイルスの侵入を許してしまったのだろう。こう想像するだけで、おそろしい病原体である。あたかも、強迫性神経症の人が日頃気にするような「非日常」が、今は日常になっているのかもしれない。