jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

PCR検査の稼働率と「感染者隠し」

 PCR検査と「感染者隠し」の関係

本日も「感染者隠し」について考察を進めたい。

巷でよく言われているのは「PCR検査の稼働率を下げて、感染者の数を低めに操作する」手法である。(統計データや数字をいじって、自分の都合が良いように加工してから発表する....どうも、旧日本軍の得意技のように見えてきたのだが, まあ人間の考えることなど大体一緒なのかもしれない。そういえば、現在の政府の説明によると「現在も景気は緩やかに回復中」なのだという....数字を加工せずに「言い張る」というのが「進化した現代」のやり方なのかもしれぬ。)

そこで、PCR検査の数を分析して、感染者の数に対してどの程度「科学的に」検査を行っているか、それとも行っていないか判定してみたいと思う。

まずはPCR検査の数を公表している自治体を探さねばならない。驚くべきことに、東京都は検査数を公表していた!最近、話題になった「東京都 新型コロナウイルス 感染症対策サイト」にいくと、日毎の検査数を知ることができる。

stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp

このサイトの開発はGitHubで行われている。GitHubとはマイクロソフト系の運営弾代であり、オープンソースのコード開発のためのプラットフォームを提供する無料のサービスである。かつてのsource-forgeと似たようなサービスだが、現在はこちらの方が人気があるようだ。東京都のコロナウイルス 対策サイトのためのWebアプリの開発は、こちらのGitHubページで進行中で、アカウントを持つものなら誰でも参加できる。

最近、このホームページが話題を呼んだのが、台湾のIT担当相である唐鳳(Audrely Tang)氏がこのGitHubのプロジェクトに参加していたことが判明したことである(単に漢字コードを日本語から台湾語へ変更するリクエストを出しただけのようだが)。彼女は台湾におけるCovid-19対策に対して重要な貢献を行い、その水際における防止防疫に決定的な役割を果たした(その経歴を見ると鳥肌が立つほどの天才である)。「科学に基づく政策」がどれほど効果的か、日本政府や東京都はよく学ぶと良い。

話がそれたので、元に戻ろう。

長野県もPCR検査実績を公開していた。東京都のサイトに比べると美的には見劣りするが、実務的にはこれで十分だし、こちらの方が使いやすい。これも利用しよう。

愛知県も3/1よりpdfで公開を始めているので、採用しよう。

北海道は、残念ながら積分値しか公開していない。毎日データを記録するわけにはいかないので、残念ながらこれは利用できない。

大阪府は画像の形で公開している。これは利用できる。

とりあえずは、この4つでみてみよう。

 


大阪のPCR検査

大阪のPCR検査実績のグラフを見つけたので、先日の分析と比較してみた。

 

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大阪府におけるPCR検査数と感染者数の推移

これは大阪府が公開しているデータをもとに作ったグラフである。横軸は時間を表し、最初の26,29というのが1月26日から29日という意味。その次の1は2月1日という意味である。4,7,10,13,16.....28までが2月である。28の次の2が3月2日を意味し、残りは全て3月である。

まず気がつくのが、2/14まで大阪府PCR検査をほとんどやっていなかった、という事実である。ほとんど実績は0である。それでも、ときどき検査をしているように見えるのは2月1日と2月10日に行った5検体である。(面白いことに、大阪府PCR検査は10日おきにまとめて検査しているような兆候がみえるが、これはフーリエ変換して分析してみないとはっきりしたことは言えない....。)

初めて10検体以上の検査を行ったのが2/15日である。ライブハウスにおける最初のクラスター感染が発生したのは2/15, 16であるから、この検査はこのクラスター感染の発生とは無関係である。なぜ大阪府が気持ちを切り替えてPCR検査を「10倍」に増やしたのかというと、それは和歌山での感染者発覚によるものだろう。

2月13日、和歌山県は有田病院の医師が新型コロナウイルス に感染したことを発表する。院内感染が発生したため、病院は閉鎖となり、高齢の入院患者への感染を防ぐための調査が始まる。徹底的な調査は功を奏し和歌山県でのクラスター感染は限定的なものに抑え込むことができた。この調査を率いた責任者が野尻孝子氏和歌山県福祉保健部技監)だ。徹底的なPCR検査を行うことを決めた野尻さんは、和歌山県のもつPCR測定器では対応できない分を大阪府に依頼して検査してもらったのだ。おそらくこれが、2月15日付近で大阪府PCR検査が増えている理由であろう。和歌山県の集中的なPCR検査は23日まで続いたが、これに呼応するように大阪府PCR検査数の最初の山も23日頃に下火となっている。

大阪府PCR検査の2つ目の山は2月25日頃から始まる。北海道によるPCR検査によって、札幌を訪れていた大阪のライブハウス関係者の感染を発見したのが2月25日である(発表は2月26日)。明らかに、札幌からの連絡を受けて大阪府はライブハウスの関係者のPCR検査をやり始めたのが2月25日か26日なのであろう。大阪にいた別のライブハウス関係者(札幌で陽性が判明した人の同僚)の陽性が大阪府によって確認されたのが2月27日である。大阪府PCR検査が本格化したのはここからであるから、やはり北海道が大阪の感染者を偶然発見したのが契機となって、大阪府PCR検査はやっと動き出したのである。この分析が本当ならば、大阪府の場合は「隠蔽」というよりは、「怠慢」というか「油断」というか「(大阪は大丈夫という)自惚れ」というか、そういうものだったような気がしてきた。

3月4日に大阪府は感染者数が1日に9人も見つかるという「ジャンプ」が発生するが、これはPCR検査をやらずにいた間にクラスター感染が広まってしまい、一気に感染者が見つかったためであろう。しかし、大阪府は、北海道からの指摘があった後は、1日に100件近くのPCR検査を行い続けており、これが功を奏してクラスターの抉り出しに成功したと言えるだろう。ここは評価して良い。

感染クラスターの規模は、PCR検査の怠慢/空転の時間に比例する、というのがこの分析でわかった。名古屋のクラスターは2つあって、その広がりは現在日本最大であろう。死者も最も多い。これは名古屋でコロナウイルス は蔓延していたのにも関わらず、蔓延し始めた瞬間を基準点としたとき、そのPCR検査不履行期間があまりにも長くなりすぎたのが原因であろう。

もちろん、大阪のクラスターもかなり大きい。それは和歌山県で感染が始まった頃にPCR検査を自分の府民のために使用しなかったツケであり、もっといえば、最初からPCR検査をフル稼働しなかったツケでもある。

この観点から見ると、東京都と神奈川の状況は非常に心配である。東京では屋形船のクラスター、神奈川には相模原と鎌倉のクラスターがある。両者ともPCR検査の稼働率は低いと思われる。目を閉じているうちに、地下で汚染の連鎖は限りなく広がっている可能性がある。「風の谷」に腐海の胞子が忍び込んだときを思い出さずにはいられない。