jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

荒川区の感染者急増の原因はやはりクラスターらしい

先ほどの分析で、荒川区でなにかが起きている可能性がある、と推測したが、どうも介護施設でクラスター感染が発生しているようだ。

www.city.arakawa.tokyo.jp

6/27-7/4の1週間余りの間、毎日感染者が確認され、合計で28人の感染者が確認されている。施設に入所している老人のみならず、職員にも感染は広まっていて、大きなクラスター感染がすでに発生しているといっていいだろう。 

検索してみると、小さな記事で「福祉施設でもクラスター発生か」とあるものの、「夜の街」の大規模クラスターのインパクトに隠れてしまい、ほとんど注目されてない。ちょっと前なら、30人近くのクラスターが出たら大騒ぎだったはずだが、すっかり「慣れて」しまったように見える。これは危ないサインである。

知らぬ間に身の回りに感染は広がり、結局は老人たちに感染が広がっていく。感染者のほとんどは若者だが、死者のほとんどは老人たちであるから、この調子で福祉施設や病院でのクラスターが連発してくると、あっという間に病院は埋まってくるし、死者や重症者の数もうなぎ上りになって、再び「恐怖」が蔓延することになる。

加えて、小学生や中学生の感染がポツポツと始まりつつあり、これが面状に爆発すると大変なことになりそうである。特に、子供を老人の預けて仕事に出かける若いカップル、という構図がまさに危ない。

「ファクターXとか言っていたのが恥ずかしい」、という日が来なければよいのだが...

週刊:東京23区の感染者発生トレンド(3)

週刊の東京23区の感染者トレンドの3回目である。今週は、100人越えの日が続いているので、先週と比べてどの程度の差になっているか見てみたい。

 

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東京23区の直近1週間の感染状況(6/29-7/6の発表分)

いくつか気になるポイントが見えてきた。

(1)新宿の感染者が「倍加」しているのがわかる。つまり倍加時間は7日=1週間ということになる。感染のスピードが指数関数的になっているのは、非常にまずい状況である。

(2)先週のレポートを読むと、「豊島区の増加を埼玉県との関わりだとみているが、まだ証拠がない」と書いてある。これに関しては答えが得られた。やはり「埼玉つながり」であったのだ。「埼玉県人の東京玄関」と呼ばれる池袋での感染が増加していたのであった。感染者が増加する新宿を避けて池袋へ流れた人が多かったようだが、自分が感染を蔓延している張本人だと感じていないのが問題である。池袋の街も、新宿の出来事を他人事だと感じていたようだ。「絶対に新宿から流れてくる人が多いはずだから、今週だけ休んでみよう」と思った人が池袋には少なかったということだ。(下手すると、今週はお客増えてるね、やったー!、などと思っていたのだろうか?)お気の毒である。

(3)板橋区練馬区が上位に上がってきた。もはや常連といってもいい。やはり、埼玉県の関係なんだろうと思う。この地域は意外に人的交流があるのではないだろうか?国境の町のような「国際的な」領域なんだろう、きっと。

(4)絶対数は少ないが、倍加している区が増えているのが気になる。特に、杉並区、北区の増加が著しいが、なんといっても荒川区がすごい。これは何か深刻なクラスターが発生しているような感じに見える。政治家たちは「夜の街」に一般人の視線を釘付けにしたいようだが、荒川区の増加は「日常生活の脅威」を示唆しているようで不気味である。ちなみに、渋谷区の次が足立区、そして大田区である。それぞれ13人、12人と決して少ないわけではない。この2つの地域は「東京の下町」であるから、ここに感染が広がった時に東京が「感染爆発」している可能性が高いと考えている。要注意の地域である。

荒川区で何がおきているか、少し調べてみたい気がする。

世田谷区立の小学校で児童感染者が出たこと

ネットを見ると、世田谷区の区立小学校の児童一人が新型コロナウイルス に感染した、という報道に大きな動揺、衝撃が走っている。もともと、人口が多いこの地域(東京23区内で最多)では、感染者が多かった。絶対数で言えば、新宿での感染拡大が始まる4月頃は世田谷における感染者が東京区内で最多であった。ただ、人口に対する感染者の比率に換算すると港区や新宿区などの方が多くなる、という解釈がなりたち、人々はそれなりに冷静であった。

世田谷区民の観点から考えれば、まばらに感染者が発生している分には、遭遇確率(つまりSIRモデルのβである)は非常に低いから、絶対数が多くてもそれほど心配ではなかったはずだ。

ところが、小学生に感染者が出て、その感染経路が不明であり、下手をすると学校内感染かも、などということになると、これはクラスターの発生の可能性が高まる上、家族内感染を通して、区域一体の大流行に結びつきかねない。ということで、多くの人が心配になり、恐怖を感じている、という構図なんだろうと思う。

小学生児童に感染者が出た、というのが昨日の夜半、つまり0時過ぎであったというのが、別の意味で大きな問題であった。というのは、東京都知事選挙の選挙会場として小学校の多くが利用されているからだ。万が一、感染者が出た小学校を消毒もなにもせずに会場として利用し、そこで感染者が新たに発生したとなると、東京都は責任をどうとるのか、という問題が発生する。

かといって、0時に報道されてから、選挙会場が8時に開くまでに、学校全体を消毒することなぞできはしない。果たして、この問題をどうやって東京都や選挙管理委員会は切り抜けたのであろうか?この問題はネット上で若干議論されていて、「さあね」という結論になっていたのだが、さきほど解決らしいものが議論されているのを見つけた。

どうやら、どこぞの誰かが関係当局に問い合わせたようで、選挙会場での感染の可能性について尋ねたという。その返答として、「感染した児童が通っていた小学校は、選挙会場としては利用されていないのでご安心ください」という情報を得たという。

これで、世田谷区の選挙に行った人たちの心配は解消された。情報というのはこういう形で開示すると人々の役に立つのだと感じた。世田谷区も東京都も、とにかくひた隠しに情報を隠蔽しようとしているが、それでは住民の恐怖には対処できないし、恐怖に駆られて調べまくっている人たちの暴走(デマやでたらめの拡散)を、むしろ誘導していまうことになる。

むかし、長野県松本市発生したサリン事件(東京の地下鉄でのサリン事件の前年に発生)において、河野さんという一般人が当初疑われ、警察から冤罪をなすりつけられて、ずいぶんひどい目にあったことがあった。デマとか思い込みというのは、人を殺すこともあるから気をつけないといけない。

さて、選挙会場に利用された小学校に感染した児童が通っていないということになれば、消去法を使って、感染が発生した学校を(大雑把だが)絞り込むことができる。

世田谷区の区立小学校は100校よりは少ないが50校以上はあるだろう。その全てに電話をかけたり、メールを送って問い合わせるのは大変だ(とはいえ、横浜の場合は、そうやって電話をかけることで絞り込んで行った人もいたそうである...)。しかし選挙会場のリストがあれば、その全てをしらみつぶしにする必要はなくなる。

ところが、選挙会場のリストを調べてみると、世田谷区のホームページからすべて削除されていたのである。(ちなみに目黒区、品川区、渋谷区などを試しに調べてみると、本日、つまり翌日になっても、まだそのリストは閲覧できる!)つまり、世田谷区は事前に手を打って、会場リストから割り出されないように手を打ったと見える。

しかしである。google検索のオプションをうまく利用すると、昨日まで表示していたデータを引き出すことは可能であり、それを利用すると、いとも簡単に世田谷区の選挙会場のうち、小学校だったところのリストを見つけ出すことができるのだそうだ。(言われた通りに実行すると、ちゃんと出てきたからすごい。)

世田谷区の小学校のリストは世田谷区のホームページで公開されているので、感染児童が通っている可能性のある小学校をリストアップすることはできる。こうして、15校程度まで絞り込むことが可能になる。

いくつかばらついている地域もあるが、リストを見たところ、とある川に沿った地域に、候補として残った小学校がたくさん分布していることがわかる。もちろん、この地域とは無関係の場所に一校だけ孤立しているような候補もあり、そこが点として該当する可能性はある。あくまで、候補となる学校が固まっているのがこの川沿いだというだけであって、その地域がどうのこうのというわけではない。

しかしながら、この地域は絶対に違う、という地域も判明するわけで、広い世田谷区のなかでも、感染者が出た可能性のある地域を絞り込めれば、それは大きな情報となりうる。

この後やるべきことを言ってみろと言われれば、例えば、候補に残った学校に直接電話をかけてみても良いだろうし、実際に行ってみて休校になっているか確かめてもいいだろう。ネット社会であるからには、連携して調査を進めれば、あっというまにどの学校か判明してしまうはずである。

ここで、問題にしたいのは、世田谷区や東京都が情報を隠そうとしても、いろいろな方法を利用して、それは遅かれ早かれ、一般人にばれてしまうということである。これに加えて、横浜の場合のように、内部関係者からのリークもあるだろうし、大田区のように少数の誰かが何らかの方法で情報を知り得て、公開してしまう場合もあるだろう。

結局はばれてしまうものをひた隠しにして、その間に万が一にも感染が蔓延したりした場合、初動対応のまずさを指摘されたりといった状況が発生すれば、その先の市民と当局の間「信頼」というものは失われてしまう。その結果として、命を奪うようなデマやでたらめが飛び交い、大変な無法状態へと突き進んでしまう可能性だってある。心無い差別や、無関係の人が風評被害に遭うことも考えられる。

東京とも世田谷区も、個人情報を晒す必要はないので、住民の安心に関連する情報だけは速やかに公開すべきだろう。たとえば、どの地域の小学校で感染者が何人出て、感染経路はどうで、その児童の医療処置の程度、学校内のPCR検査の規模、クラスター感染の有無などを、こまめに公開することで、安心と信頼が得られるはずである。これこそが、知性によるクラスター対策であり、勝利への方程式となるはずである!

[追記] 夕方になって、各小学校のブログや給食情報が更新され始めた。感染児童が発生した小学校は本日は休校であるから給食情報などは更新されることはない。先ほどまでに15校程度に絞り込めたから、これらの情報を確認することで、さらなる絞り込みが可能となるだろう。

面白いのは、繁華街に近いある小学校のアクセスカウンターをみると、今月のアクセス数が8000人であるのに対し、本日1日のアクセスが6000人になっていたりする。つまり、世田谷区に在住の6000人近い方が疑ってあちこち調べているということである。また、午後の時間帯にアクセス制限がかかった小学校もあったようだが、その学校は選挙会場になっていて(おそらく)無関係だと思う。

ちなみに、とある検索キーワードランキング情報にアクセスすると、2、3の小学校の名前が特に高い頻度で検索されていて、結構な人数の方がその学校を疑っていることが確認できる。検索されている学校の中には選挙会場になっているものもあり、(おそらく)そこは大丈夫だと思われるが、感染者が出たと疑われる最終候補に残った学校もある。後者は繁華街に近い学校なので先入観みたいなものがあるのかもしれないし、実際その学校なのかもしれない。ただ、この段階で、先入観のままに学校名を書き出すと「デマ」の誕生である。気をつけねばなるまい。

給食情報を夜に行う学校も数校あるので、おそらく今晩の日付が変わる頃には数校にまで絞り込めるはずだ。とはいえ、すでにこの段階で、記述がおかしい感じの学校があって、我輩は個人的にはこの中のどれかが該当するのではないかと考えている。毎日、ある時間に決まって更新されるはずの記述が今日だけ書かれていないのだ...もちろん、誤解している可能性もあるから気をつけねばなるまい。

こうやって、デマ寸前の状態というものは醸造されていき、行政への不信となって溢れ出すのだ。世田谷区は早く情報開示に動いてもらいたい!

 

東京の区立小学校での感染の広まり

東京都の知事に再び小池氏が選ばれた。「経済と感染対策の両立」とか、「自粛から自衛」など、キャンペーンの標語づくりは随分とお上手であるが、果たして東京都の小学校に少しずつ広がる感染の広がりについてはどのような手を打つのだろうか?

さきほど、世田谷区立小学校の児童一人が新型コロナウイルス に感染したという衝撃的なニュースが流れた

www3.nhk.or.jp

子供が感染したというのは、東京都ではこれが初めてではないか?(最初は北海道、先日は北九州の子供が感染したのは知っているし、東京都の教員の感染も知っている。)

大田区の小学校、江東区の小学校、横浜市の小学校と、このところ小学校での感染が立て続けにあった。が、そのどれも教員の感染であった。しかし、今回の世田谷のケースは子供の感染ということだから、クラスター感染に発展する恐れがある。

東京都の教育委員会や区役所は、感染が発生した小学校の名前を公表していない。世田谷区も同様である。このやり方に反対する人は意外に多くて、どの学校か暴き出そうとする人、内情を漏らそうとする人などは結構多い。実際、横浜と大田区の場合は、検索エンジンで調べると、すぐにわかってしまった...(もちろん、証拠がないので確定できないが、内容を見ると内部からのリークのような感じが強く、結構あっているのではないかと考えている)。

世田谷区の場合も、隠そうとしても次第にバレていくはずである。一番よくないのは、関係者だけに知らせて、学校内部ですら情報を隠そうとする態度である。次に良くないのは、世田谷区の住民に対して情報を隠そうとする態度である。隠せば恐怖を煽ることになる。感染した子供の個人情報は出す必要はないが、どの地域の学校で何人くらいの感染者が出たか公表しないと、市中感染が広まってしまう恐れもあるし、恐怖に身が竦んで家から出られなくなる子供やその家族たちが多く発生してしまうだろう。

では、何の思慮もなくただ公表して良いかというと、これも様々な差別や偏見を助長する可能性もある。なにが正解かわからないが、舵取りは難しいと思われる。

ただ、今までの成功例を見ると、ある程度の範囲まで公表して(たとえば、病院の場合は、どの病院かちゃんと公表したところは最終的には解決にたどり着いている)、徹底的にPCR検査を行い、罹患者を隔離してしまうのが、もっともうまくいくパターンだと思われる。

追記:神奈川では、県立学校(中学校?)で教職員と生徒、横浜市立小学校では児童が感染したという報道があった。

小学校の方が気になる。先日の「60代女性教員の感染」が確認された学校と同じ学校の児童だろうか?ネットの情報では、この小学校では数十人の濃厚接触者(児童を含む)をPCR検査したが、全員「陰性だった」ということであったが...安心していただけに、このニュースには再び心を揺さぶられてしまった....(学校の名前はわかっているので、調べやすいのではないかと思うが、今のところは不明である。)

 

www.asahi.com

追記:東京新聞によれば、小学生が感染したのは横浜市立小学校女子児童らしいが、どうやら学校内での感染ではなく、すでに感染している人物(たぶん父親)からの「家庭内感染」のようだ。母親の感染も確認されている。これは、先日の小学校とは違う学校のようだ。また、川崎市の小学校でも男子児童が一人感染したとある。これは学校内感染なのか、それとも家庭内感染なのか、川崎市は公表してないようだ。また、川崎市では、県立高校の女子生徒が感染したというから、中学ではなかったようだ。もう一つの学校関連の感染者は県立三ツ境養護学校の20代女性教諭だという。大田区の場合もそうらしいが、養護学級関連の教員の感染者が多いのが気になる。

 

www.tokyo-np.co.jp

PCR法のしくみの概略

本日の東京の新規感染者は131人。都知事はついに「不要不急」という条件こそ付けたが、ついに移動制限(自粛)を呼びかけることになった。この言葉を聞いて、20-30代の人々がどれだけ行動制限するかは疑問だが、(初期の)指数関数的増加を考える上では行動制限がない方が予想しやすい。政府はまだ「経済と両立」などといっているので、なおのこと計算どおりに推移するのではないかと考えている。昨日の分析によれば、倍加時間10日の指数関数的増加である。

指数関数というのは、一般の人(政治家も含む)には馴染みのない考え方らしい。「このところ50人代で安定している」とか「若者が3/4を占めているのでまだ安心」とか、あっという間に手が届かなくなる指数関数的増加の恐怖を微塵も感じさせないコメントが政治家の間に目立つ。ちょっと危険な感じがする...

ところで、指数関数的に増加するのはなにも感染者ばかりではない。PCR検査でも「指数関数的増加」が重要になるのだ。

PCR検査のやり方は以前も調べたのだが、細かいところを把握し忘れていた。まず英語の省略でCRの部分はなにを指すかというと、それはChain Reaction、つまり連鎖反応だった!もともとは、原子炉や原子爆弾におけるウラン235とかプルトニウム239といった核物質の(遅い中性子を媒介とした)分裂反応をさすのが、「連鎖反応」という用語であった。鼠算式に中性子の数が増え、核分裂の数も増えるというのが連鎖反応である。

これと同じ仕組みで、DNAの複製を行うのがPCRすなわちP連鎖反応である。では、Pは何を意味するかというと、ポリメラーゼという酵素である。この化学物質がDNAの複製を実施しているのである。ポリメラーゼを取り出し、増幅したいDNAやRNAと混ぜ合わせ、その溶液の温度を上げたり下げたりすると、酵素の反応が開始して、DNAの複製を試験管内で行うことができるのである!当然この仕組みを発明した人はノーベル賞をもらっている。

ジュラッシックパークで、琥珀に閉じ込められた蚊の体内から、恐竜のDNAを取り出すシーンがあるが、少量のDNAを増やすのがまさにPCRである!また、犯罪捜査で採取した微量のDNAもPCRにかかれば、いくらでも増幅できるのである。かつて、少量のDNAを無理やり解析したため、捜査結果が間違ってしまったこともあったようだが、PCRの実用化により、そういう問題は減ったようである。

温度の上げ下げの周期は2−3分で、分析可能な量にするためには,100万倍から1兆倍にDNAを増幅する必要があるらしい。これは20-40サイクルに相当する。したがって、1時間から2時間程度の時間が(増幅に)必要となる。

加えて、増幅したDNA断片の配列を、完全なDNA配列が解明されたウイルスや生物のDNA配列パターンと比較するための時間が必要になる。計算機の速度にも依存するが、だいたいトータルで6時間程度がPCR検査には必要になると言われている。

仕組みを知れば、納得である。

東京の倍加時間の予想


昨日、とうとう東京の感染者が100人を超えた。そして先ほど、本日は124人であるという報道があった。

初期における感染者増加は指数関数的に増加するので、倍加時間の概念が利用できる。

加えて、東京都も日本政府も強い行動制限を出さない、といっているので、自粛とか休業要請とか「計算上は面倒臭いこと」が起きず、(あくまで)数理理論的な観点から「理想的な状況」が続くはずなので予測はやりやすいだろう。

ちょっと前に、大阪大学原子核理研究センター(RCNP)のセンター長である中野貴志氏が提案したK値という概念がある。これは、日本の感染者の数は曜日によって増減が激しすぎて科学的な分析データとして使いにくい、ということから、「1週間の平均値」を利用する、という提案である。このように感じた人は結構多くいて、K値以外にも、多くの分析で、週間平均値を使う研究者が最近増えている(ちなみに、我輩も周期7日でPCR検査数が振動する現象を指摘したことがある)。

ということで、1週間を単位とした感染者の増加傾向を分析して倍加時間を算出してみたいと思う。これは実に簡単で、エクセルにデータを代入し、予想曲線を指数関数を指定してフィットするだけで良い。

まずスタート地点は「東京アラート」と言われたものが終了した日を選ぼう。すなわち、6月12日である。この日に発表された東京都の感染者の数は25人であった(解除されたからといって、決して少なかったわけではない...)。計算を行うと、

\begin{equation} N(t) = 138\cdot 2^{(t-1.168)/1.49}\end{equation}

 という関数系でフィッティングできることがわかった。

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東京における6-7月の新規感染者数の推移

倍加時間は1.49週間、すなわち10.4日であると算出された。つまり10日経過するたびに、新規感染者の数が2倍に増えるという予想である。\(138=2^{10.6/1.49}\)なので、この結果を代入すると

\begin{equation}N(t) = 2^{\frac{t+9.42}{1.49}}\end{equation}

となる。つまり、感染の倍々ゲームは東京アラートが終了した9週ほど前から始まった、という計算結果であるが、それは4月10日である。緊急事態宣言が終了したのが5月25日であるから、この数字は現象の解釈には対応していない...

理論曲線ができたので、来週、そしてその次の週の予想をしてみよう。来週1週間の感染者の数は820-830人と推測される。今日を含む今週7日間の総計は527人だったので、来週は、おそらく1日に200人近くの感染者が発表される日も出てくるであろう。

その次の週は1320-1330人となる。1日の平均としては190人程度となる。ということは1日の新規感染者の数が250人とか300人を伺うような日もでてくるかもしれない。

さて、現在東京都の病床は3000床あるから余裕だということであるが、2週間後の感染者の増加分は2150人と予想されるので、あっという間に埋まってしまう計算である。指数関数的増加というのは、ぼんやりしているとすぐに手遅れになるのが怖いところである。

政治家たちは「様子を見る」といっているが、おそらくあと2、3日くらいしか余裕はないと思われる。専門家がこの状況に耐えきれなくなって「直訴」する可能性があるから、その意見を聞き入れる懐の深さを政治家たちがまだ持っているとするならば、もしかすると「第二回非常事態宣言」はこの週末にも出る可能性がある。

 

注:本来、倍加時間というのは患者総数\(\mathcal{N}(t)\)に対して適用される概念であるので\begin{equation}\mathcal{N}(t)=2^{\frac{t}{T}}\end{equation}と書くべきものである。\(T\)が倍加時間である。我々が考えた新規感染者の数\(N(t)\)は、この量の微分であるから\begin{equation}N(t)=\frac{d\mathcal{N}(t)}{dt}\end{equation}と考えるべきである。計算すると\begin{equation}N(t)=\frac{\ln 2}{T}2^{t/T}=\frac{0.693}{T}\mathcal{N}(t)\end{equation}となるから、比例係数を除けば同じものである、と言って良い。

ただ、この係数の存在は若干気になるのは確かである。その効果を確かめておこう。今回のデータ分析により\(T=1.49\)であることがわかっているので,比例係数は約0.465程度と算出される。\begin{equation}0.465 = 2^{-\frac{1.65}{1.49}}\end{equation}なので\begin{equation}N(t)=2^{\frac{t+9.42}{1.49}}=2^{\frac{t+11.07-1.65}{1.49}} = 0.465\cdot 2^{\frac{t+11.07}{1.49}}\end{equation}となる。

したがって、最初の理論では「感染の拡大が始まったのを9-10週ほど前」と推測していたのが、理論修正によって「15週ほど前」という値に変更され,なおさら現象に直接は対応していない数字となった...(ということで、単なるデータフィッティングになってしまった...)。

突然変異"G"とはなにか?:ファクターXの正体に迫る(かも)

 

緩い対応でも日本の感染者/死者が少ないのはなぜか(ファクターX)

新型コロナウイルス の蔓延の状況について、しばらく前から注目されてきたのが、欧米に比べ日本(を含むアジア諸国)の深刻度が低いということである。

日本政府のような緩い対応で済ませても、死者の数が数万人のレベルに跳ね上がらないのはなぜだろうか?文化の違いだとか、マスクの文化の有無、あるいは言語の発音システムの相違だとか、様々なことが言われてきた。BCS接種の可能性や、類似のウイルスに日本人はすでに感染していて抗体がついているとか、科学的にみえるような説もいくつか飛び出したが、その真意は不明確だし、いまひとつ「眉唾物」に見える。この何かわからない「謎の理由」を山中教授はファクターXと呼んで、その解明に注力している。

突然変異”G”とは何か?

そんな中、ワシントンポスト紙に面白い記事が載った。新型コロナウイルス の突然変異D614Gについてである。この説明が正しければ、非常に簡単に、欧米とアジア諸国の感染流行の様相の違いについて説明することができる。突然変異がヨーロッパで発生し、そちらのほうが感染力が強いというのである。

この突然変異を科学者たちは"G"と呼んでいる。ウイルスのタンパク質構造の一部分(#614部位)がDからGに変化したということで、D614Gという記号で呼ばれる突然変異である。

これが本当なら、日本の状況は、Gが侵入した瞬間に一変する可能性がある。感染率が1%に届かないような現状において、欧米のような深刻な状況にあっという間に発展する可能性が高い、というのである。実際、100年前のスペイン風邪における「第二波」は突然変異による感染大流行であり、第一波をなんなく切り抜け油断した人々の多くの命は第二波で失われたのであった。

Gに関しての詳しい情報

ワシントンポストで紹介されていた2つの論文(まだプレプリントの状態だが)を見てみたので、順番にその内容をまとめてみよう。

まずは、リフェレンスナンバーhttps://doi.org/10.1101/2020.6.12.148726の論文"The D614G mutation in the SARS-CoV-2 spike protein reduces S1 shedding and increases infectivity"を見てみよう。

コロナウイルス のスパイク(突起部)

コロナウイルス が人体への侵入に利用するのがACE2という酵素である。この酵素は肺胞に多いことが知られていたが、その後の研究で唾液腺にも多く含まれることが判明した。飛沫感染、つまり唾液による感染が主な経路であることがわかったきたのは、この発見によるところが大きい。喋ると感染るのである(特に、うまいものをみて、食べて、唾液を大量に分泌しながら会話するのが最悪である)。

ミクロのレベルでみると、ACE2や人体の細胞に取りつき、膜を溶かして侵入する際に重要な働きをするのが、コロナウイルス の表面に多数生えている「棘」つまりスパイクである。専門家はスパイクをSと省略する。スパイクはタンパク質でできているので、スパイクタンパクのことをS-プロテイン(S protein)と省略して呼ぶ。

S-プロテインには2つの領域があり、人体の細胞や酵素との結合の機能をもつレセプター結合部(Recepter Binding Domain=RBD)をもつS1部と、人体の細胞膜を溶かし融合するための機能を持つS2部である。

今回注目されている突然変異が発生したのはS1部である。 

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新型コロナウイルス のスパイクタンパク質の構造(論文より引用

突然変異D614G

S1部分のある場所(カルボキシ末端領域)で発生している突然変異をD614Gと専門家は呼んでいる。長いタンパク質の中で#614部位という場所があり、そこでD(アスパラギン酸というアミノ酸)という物質がG(グリシンというアミノ酸)に置き換わる突然変異だという。#614部位における、DとGの入れ替えに関しては、複数の置換パターンがあるらしく、多数のタイプの突然変異が急速に発生していることから、研究者たちは警戒しているとのことである。

 D614からG614への変遷

遺伝子情報が集積されているデータベース GenBankに登録されたウイルスの遺伝子構造をこの論文の研究者たちが分析したところ、2月、3月には突然変異のないD614型が多かったのに、4月,5月になると突然変異型G614型に塗り替えられていったのだという。G614、つまり突然変異型の割合は、2月(0%), 3月(26%), 4月(65%),5月(70%)と増加したという。

おそらく、これはヨーロッパの感染爆発で発生し(3月ごろ)、それがアメリカに飛び火しNew Yorkでの感染爆発したのを機に(4-5月ごろ)、突然変異が加速したものであろう。

新型コロナウイルスRNA型のウイルスで、二重螺旋型のDNAと違って、一本鎖である。したがって、複製されるときのエラー制御が弱く、突然変異がおきやすいのだ。加えて、コロナウイルス は、ウイルスの中でもRNAの長さが非常に長く、情報の写し間違えが発生しやすいことで知られている。

したがって、大量の感染者が出ると、必然的に突然変異が発生する確率が上がってしまうのである。

突然変異D614Gによるウイルスの性質変化

この突然変異によって新型コロナウイルスのなにが変わったのだろうか?研究者たちによると、どうやら感染力の強化につながっているという予想である。D614Gが発生したS1領域の#614部位というのは、コロナウイルス のスパイク部分のタンパク質である。この突然変異により、S1部分の(物理的な)切れ目(隙間?)が狭まり、壊れにくくなったのではないかというのである。スパイクにはRBD、すなわちACE2に取り付くために重要なレセプター結合部がある。物理的な強度が相対的に増加すれば、侵入過程において失敗が減り、より感染力が高まるというのだ。

ちなみに、S1部分の切れ目のことをSheddingと専門家たちは呼んでいる(医学用語としてのSheddingの使い方は、こちらの論文で確認できる)。ウイルス関連でSheddingという語句はもう一つ別の意味で使われるから要注意だ。それはViral sheddingという用法である。こちらは、細胞への侵入に成功したウイルスが、細胞のタンパク質合成機能を乗っ取って大量の自己複製に成功した後、大量のウイルスが細胞膜を破って外へ飛び出す現象を意味する。ウイルス排出、という意味となる。(よくよく考えると、後者の使い方も「細胞を切って壊して出てくる」わけだから、「切れ目」という最初の使い方と共通する。)

 この論文では、突然変異によって感染力は強まったが、毒性はそのままだという。つまり、致死率が高まったわけではないと推測している。この辺りは、まだ研究データが不足していて結論は出せないとしてまとめてある。

それでは2つ目の論文へ行ってみよう。

2つ目の論文

次は、レフェレンスナンバーhttps://doi.org/10.1101/2020.04.14.040782の論文、"The global populationofSARS-CoV-2 is composed of six major subtypes"をまとめてみる。

最初に難しい専門用語が出てくるのであらかじめ調べておこう。

  1. genome ゲノム DNAのすべての情報のこと。DNAには遺伝情報の伝達に利用している部位と、利用せず遊ばせている部位(冗長部分)がある。「遺伝子情報」としてしまうと、DNAの無意味な配列部分は相当しないのだが、遊びの部分にも意味のある分子配列が含まれていることもある。したがって、役にたつ部分だけでなく、DNAすべての配列を調べ上げてしまおう、という流れがある。ゲノムとは役立つところも利用してない部位もすべてのDNA情報のことを指す。加えて、染色体のDNAのみならず、ミトコンドリアなどのDNAもすべて含めたDNAのセットをゲノムという。
  2. Gene polymorphism 遺伝情報のうち、個人の際に関連するヌクレオチド(G,A,T,C、つまりグアニン、アデニン、チミン、シトシンという4つのDNAコード分子のこと)の配列の相違のこと。
  3. Phylogenetic tree 系統樹のこと。進化の系列を表す図で、ダーウィンが最初にこれを思いついて進化論が誕生した。
  4. WSP: Widely Shared Polymorphisms

現在GeneBankに登録されている767種類のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス の正式名称)は593のグループに分類することができる(コンピュータによるヌクレオチドの組み合わせの類似性に対する数値分析)。遺伝情報の配列の共通部分を抜き出して、グループ分けをしてみると、現在世界に蔓延している新型コロナウイルス の主要な型としては6種類あることがわかったという。

詳細な系統樹が図3にあり、グループ毎に分けられている。各グループには、RNAのサンプルが採取された国が記されており、どの国でどのタイプが流行しているか、おおよその見当をつけることができる。

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SARS-CoV-2の系統樹論文より転載

論文に付されたこの系統樹は拡大すると、細かい部分まで読み取ることができる!Japanの文字がたくさん含まれているのはTypeIVつまり下の薄いピンクのグループである。このグループの中には、日本のみならず、アメリカ、ヨーロッパ、中国、中東など世界中の様々な国が含まれている。

 

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Type IVが検出された国々

一方、III型をのぞいてみると、ほとんどアメリカ合衆国だけで構成されていることがわかる。

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Type III の詳細

ヨーロッパの国々はType IIが多いように見える(若干日本のものもあるが、おそらく旅行から戻って検疫で検出されたサンプルではないだろうか?)。

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Type IIが検出された国々

突然変異の発生場所とその広がり方

ワシントンポスト紙がまとめたところによると、どうやら突然変異D614Gが発生したのはヨーロッパではないかという。イタリア、フランス、スペインなどが感染爆発して大変な状況になった3月頃ではないだろうか?この後、この突然変異は英国、そして米国の東海岸へと広がっていく。

このとき、西海岸のカリフォルニアでも感染の流行が始まっていたが、ロスアンゼルスの感染は、ニューヨークのそれに比べれば、それほど深刻ではなかった。このときロスアンゼルスで流行っていたのはD614、すなわち中国から直接来たタイプであり、感染力の弱い突然変異前のタイプだったという報告がある。

一方で、ニューヨークでは突然変異後のG614が流行っていたため、感染が爆発的に進行し大変なことになった。

シカゴでも流行は始まっていたが、当初はD614だったものが、次第にG614に飲み込まれていったという。

現在、カリフォルニアでは「第一波」(おそらくD614によるもの)よりも相当深刻な流行が始まっており、これを第二波と呼ぶならば、それはG614、つまり突然変異後のタイプによるものと考えることができるそうだ。

G614の蔓延ルート

アメリカの西海岸の事例を参考に考えれば、日本は中国から直接やって来たD614による流行が3-5月にかけて発生したと思われる。この型のウイルスのスパイクは折れやすく、感染力はあまり強くなかった。同じようにアジア諸国で起きた流行はD614によるものであり、それほどの感染爆発を引き起こさなかったと思われる。

ところが、イタリア、スペイン、フランスなどのラテン国家では、文化的に濃厚接触が頻繁に行われる文化習慣、あるいはそれ以外のなにかが原因となって、アジア諸国よりも感染の広がりが大きめになってしまった。繰り返される感染の末に、とうとうG614が発生してしまったのだろう。文化交流が密な欧州諸国にこの突然変異型はまず広まり、そこから英国あたりを経由し、大西洋を渡って、G614は米国の東海岸(特にニューヨーク)に広がったのであろう。

アメリカ国民に広がる最近の「コロナ疲れ」により、移動や経済活動を始めたアメリカの人々はG614をアメリカ中に広げてしまった。突然変異型の新型コロナウイルス は猛威をふるってさらなる感染者を生み出している。RNAウイルスの特徴として突然変異を作りやすいこのコロナウイルス は、現在の「大規模流行」を利用して、さらなる「マイナーチェンジ」を繰り返し、G614系統のさらに強いバージョンを生みだしながら、ついに西海岸まで到達してしまったのだろう。

西海岸(あるいは南部)にはメキシコとの繋がりが強い人々が多く、そこから南アメリカへとG614は広がったと思われる。

一方、英国、そしてスェーデンを経て、G614はロシアにも広がっている。しかし、ロシアとインド、中国の間には密な交流はそれほどないため、これらの国々にはまだG614は到達していないのではないだろうか?

日本のファクターXとは?

この突然変異のことを知れば、日本特殊説、すなわちファクターX理論は、脆くも崩れ去る運命にあると感じるだろう。つまり、まだ日本を含むアジア諸国にはG614系列が入り込んできてないのだ。

オリンピックを開いたり、国境を開けたりするタイミングで、欧米諸国からG614は日本やアジア諸国にも侵入するはずである。そうなると、ついに欧米型の感染爆発が発生してしまうのではないだろうか?

また、東京では本日106人の新規感染者が見つかり、経済活動を優先するあまり、人々の交流を遮る政策は当面打たないことに決めてしまった。これはイタリアで突然変異の発生を許した状況とよく似てないだろうか?だらだら長いこと、このウイルスに増殖を許してしまうとRNAウイルスの特徴、つまり突然変異しやすいという性質がついには花開き、東京自前の突然変異型を生み出してしまう恐れすらある。

自前の突然変異と欧米からのG614の両者にさらされながら、我々日本人は感染爆発までの秒読みをやっている...そうでないことを祈るばかりである。