jippiniusの自然科学研究

ジッピニウスの自然科学や技術関連についての備忘録です。

直近7日間のまとめ

木曜日になったので、直近1週間のデータをつかって、感染動向を振り返ってみたい。

先週の分析を読むと、「増加は鈍ってきたが、12月の終わりに作った予想曲線に戻ってきただけの可能性がある。つまり、年末年始の異様な感染爆発は終わったものの、12月の状況を基準に見たとき、(1月の状況は)まだまだ指数関数的な増加の範囲にとどまっているのかもしれない」というまとめであった。

ただ、この分析直後の数日の動向をみた上で判断するべし、とも書いていて、その翌日(金曜日)の激減を見て、「ピークアウトしたと見られる」と結論した。

この結論を書いた後も、順調に前の週を下回る曜日が相次ぎ、1000人を下回る日も複数回発生した。特に、月曜日は600人台が記録され多くの人が安心したのではないだろうか?(翌日に再び1000人を超えたがっくりしたかもしれないが)。

ということで、今回(34週目)は大幅な減少が記録されたのである。グラフで確認してみよう。

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東京都の発表に基づく、1週間ごとの新規感染者数の推移

まずは、黄色の予想曲線で示されるような「年末年始の感染爆発」のシナリオは消え去ったと結論していいだろう。これで、桜が咲くまでに「東京で感染者が1万人/日」とかいう報道がされる可能性は減少した(とはいえ、変異株の動向は気になるし、2月末にgoto再開とか、変なことを政府がしない限りにおいてはだが)。この黄色い予想曲線は今週で外すことにしよう。

次に、34週(つまり今週)までのデータを見る限り、第3波のピークは2週間前の第32週、つまり1月14日前後であったことが強く示唆されている。実は、これは12月の中旬に予想していた通りの結果であった。上のグラフの水色の正規分布のピークの位置がその予想曲線である。ただし、感染爆発の規模に関しては完全に「過小評価」であった。(最大でも1000人/日程度だと思っていた...)

予想通りに来ている部分と、予想を上回る部分が混在している状況である。

ではなぜ、感染爆発の規模は予想を上回ったのだろうか?それは、やはり、年末年始に人に会って、飲み食いをし、楽しい会話を楽しみたい、という願いを持った人が予想以上に多かった、ということに尽きる。

この年末年始の感染爆発は、なにも日本だけの話ではないのだ。英国のグラフを見ても、米国のグラフを見ても、年末年始をピークにして、急速に感染者数は減少しているのである。もちろん、この2つの国はロックダウンをしているので、その効果もあるだろう。しかし、ロックダウンというのは政府の方策であるに過ぎず、実際に人々がその通りに行動しているかというと、どうやらそうではないらしいのだ。

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英国の新規感染者の推移(週別統計)データ出典: coronavirus.data.gov.uk)

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米国の新規感染者の推移(日別統計)出典:covidtracking.com


やはり、年末年始は、ロックダウンの決まりを多少破ってでも人に会いたいのだ。「まあ、いいいでしょ」という感じで世界中の人々が交流を続けていたのであろう。休暇が終わり、仕事が再開し、いつもの生活が戻ってきたため、自然と感染者数がいままでのトレンドのところまでは戻ってきたと解釈すべきだろう、と多くの人が考えている。

 感染者数の推移については、よく知られた一般的特徴がある。すなわち、ピークの前後でグラフが対称的になっていないのだ。ピークに登るまでは鋭いが、ピークを降りるときは緩やかになるのである(一般的に)。この傾向は、英国のグラフにすでに見られる(米国は今のところはかなり対称的に見える)。

東京のデータを見てみよう。ピークの位置が32週目にあるとすれば、その前後の「対称的な位置」にあるはずのペアは(31,33)および(30,34)週目ということになる。しかし、この2つのペアの両方でピークの後の方が感染者数が多いのがわかる。つまり、

31週目の感染者数 < 33週目の感染者数,

および

30週目の感染者数 < 34週目の感染者数

という関係がある。ピークの後の方が数が減りにくい、という一般的な傾向が見え始めていると考えていいだろう。夏の第二波のときは、ピークアウトした後、平衡値に高止まりしてしまった。これが第3波が爆発する原因になったと多くの専門家は指摘している。今回、同じ轍を踏まないようにするには、ピークアウト後の減少は「緩やかになる」という傾向を理解した上で、自粛期間を(我慢して)長めに設定し、高止まらないようにするのが肝要であろう。

嫌な予感がするのは、週5000人程度のレベルで高止まりしそうな感じに見える点である。国会議員が夜中に隠れて銀座で飲んでいたとか飲んでいないとか、新橋や新宿で暖簾を外した後に常連さんだけを奥の部屋に呼んで営業を隠れて続けていたりとか、我慢ができなくなり始めた人たちが増え始めている。第二波のようなことになってはいけないと思う。

幸い、ワクチンはきちんと2回の接種を受けると、かなり強力な効果をもたらしてくれるらしいことが、イスラエルからの報告でわかってきた。突然変異が巷に出回る前に、日本は感染拡大に終止符を打っておくべきだろう。台湾や中国で感染が再開しているような気配があるが、これは南アフリカやブラジルの変異株が関係しているかもしれない。従来の対策では抑えきれないとすれば、それは今あるワクチンが効きにくいとか、若年層もやられる可能性が高いとか、そういう可能性が発生していることを想定しなくてはいけなくなる。実に嫌な感じがプンプン臭うのである。面倒臭い突然変異が流行りだす前に、日本社会は「ゼロコロナ」を一旦でも達成し、世界に「さすがは日本」と言わせたいものである。

報道によれば、政府は緊急事態宣言の期間延長を非公式ながら決定したということである。この判断は正しいと思う。減少傾向にあるとはいえ、今週の感染者数は7000人弱であり、平均値を見れば1日に1000人の新規感染者が東京で発生していることになる。政府が目指す「1日500人」を大幅に超えている。来週までに解除ラインまでに感染者数が落ちてくるかというと、今日までのグラフを見る限り「微妙」な感じがする。

ただ、不可能ではないと思う。というのは、そのレベルというのは、予想曲線(水色)のちょっとだけ下の水準だ。かなり難しいとは思うが、不自然なグラフになるとまでは言い切れない。もっともありうるのは、週5000人レベル前後(日平均にすると700人ちょっと)ではないかと思う。そうすると、延長はだいたい1ヶ月程度になるはずで、3月の上旬あたりまで、ということになろう。

ただし、その段階で500人/日というのは、あまりにも危険すぎる。2月は忍耐の月と考え、何とか東京の新規感染者が二桁、つまり(平均値で)100人を切る程度にまで持って来ないと、オリンピックをやれるような状況にはなりえないと考える。オリンピックの有無に関係なく、一早い終息を願うのであれば、2月は誰とも喋らないようにして過ごし、新型コロナウイルス殲滅作戦(「ゼロコロナ」)をやり遂げてもらいたいと切に願う。

残念:麻生大臣のマスクが青くなる

昨日のテレビ報道ではチラッとしか見えなかったので確認できなかったのだが、本日の新聞報道をみて確認できた:麻生大臣のマスクが不透明な青いものに変わってしまった...(下の埋め込み写真で、総理大臣の向こう側にちょっとだけ写っている)

www.asahi.com

非常に残念である。麻生大臣は感染すると知っていながら傾奇(かぶい)ていたと思ったのだが...。最近の国会議員の感染連鎖で、結局は自分の身がかわいくなってしまったのだろうか?(ちなみに上の写真を含む記事は下を参照。)

www.asahi.com

毎日の報道を聞いていると「国会議員の間に感染が広がっている」感じがある。(国民に自粛を求めておきながら)結構好き勝手に飲み食いし、出歩いているとの報道も多くなってきた。

新型コロナウイルス の脅威を過小評価しているのであれば、いけるところまでいってみたらいいかもしれない。例えば、国会で、与党議員は一斉にマウスシールドを着用してみるとかどうだろう。道理を曲げるつもりなら、傾奇てもらいたいものである。(支持率は10%切るだろうが。)

 

 

新型コロナウイルス とアポトーシスの関係

先日のエアロゾル感染の記事で利用したNIAIDの画像は、新型コロナウイルス が取り付いて、「自死」する羽目に陥ったヒトの細胞の画像であった。どうして細胞自死になってしまうのか議論した論文を見つけたので、まずはここにメモっておく。

 

www.nature.com

ウイルス感染の意味

まず、ウイルスとはなにか振り返っておこう。学者によって見解は割れているが、基本的にはこいつらは生物ではない、我輩は考えている。強いて言うならば「生物もどき」である。生物の定義は大雑把に3つある。(1)幕で囲まれ外部環境と境界が敷かれている(2)代謝する(3)増殖する。

ウイルスは(1)と(3)の条件を満たすが、(2)を満たさない。つまり、食べないし、トイレに行かないのである。それは何を意味するかと言うと、自分自身では自分の体を作らない、ということを意味する。

じゃあどうやって自分の体をつくるのかという、私たちに作らせるのである。ウイルスの「殻」や「棘」をせっせと作っているのは、私たち(あるいは他の生命体)の細胞の機構なのである。

代謝しないということは、買ったそのままの状態で(修理もせず)使い続ける自転車と同じである。いずれ錆びてチェーンやネジが外れて壊れる。これは物理学の概念を適用すると、「熱力学の第二法則」あるいは「エントロピー増大の法則」という。(外部からの物質あるいはエネルギーの供給がないと)時間とともにエントロピー(乱雑さのようなのものを意味する物理量)は増大する。生体分子の「散らばり」とは「死」を意味する。

代謝」というのは、外部から(生態系に注ぎ込む)物質やエネルギーのことである。したがって、エントロピーが上がってきたら、壊れた部品や汚染された物質を外に捨て、フレッシュな新品と交換する作業が必要である。生命体は代謝するから生きながらえることができるのだ。

ウイルスは代謝しないので、すぐに壊れる(死ぬとは言わない)。不活性化ともいう。以前に調べたように、空気中では最大でも1週間以内しか「もたない」のである。(ただし、60分程度は「生きている」からエアロゾル感染には気をつけないといけない。)

ウイルスがこの世に存在し続けるには、不活性化するまえに、増殖することである。しかし、自分自身の体すら作れないから、増殖などできっこない。そこで、我々生命体の細胞に侵入して、そのタンパク合成機能をハックし、人間の細胞の中で、人間じゃないもの、つまりウイルスを製造させるのである。(カッコーが、ヨシキリに托卵させるようなものか?あるいは、コンピュータウイルスに感染したあなたのPCはすでにあなたのために働くPCではなく、ハッカーのために働くPCになってしまうのと同じである。)

ハッキングされた側の防御手段

ハッキングされたPCは、電源を切り、ネットワークから切り離して、OSを入れ直す必要があるが、(本当の)ウイルスに感染してしまった細胞もこれと同様のことを行うようだ。

ただし、電源を切ったり、ネットワークから切り離す余裕がないときは、マシンを壊すしかない。例えば、核爆弾を制御するコンピューターシステムがハックされてしまい、今にもミサイルが打ち出されるかもしれないような緊迫した状態であれば、システムの電源コードを一刻も早く抜くほかはない。

これに対応するのが「細胞の自死」という現象だ。細胞が自分自身を殺す、ということだが、専門的には「プログラムされた細胞死」というらしい。つまり、怪我をしたり、放射線を浴びたり、化学物質にやられたり、など外的な要因ではなく、自らの生体活動として自らの細胞構造を破壊するプロセスである。

生命体、特に脊椎動物はウイルスとの生存競争を勝ち抜くため、ウイルスにハッキングされた(乗っ取られた)細胞を自死させるメカニズムを発展させた。細胞の中に入り込み、RNAを書き換えられ、ウイルスのために動き始めた「細胞内の生体工場」(セントラルドグマ)に関しては、「警察」を送り込んでウイルスを排除した入り、「作業員」に命じて工場の電源を落としウイルスの生産を止めたりする時間はないようで、一気に細胞ごと「爆破するほかはない」という判断をとるらしいのである。

3つの「プログラム細胞死」

脊椎生物には、3つの「自死」つまりプログラム細胞死がある。

  1. アポトーシス
  2. ネクロトーシス
  3. パイロトーシス

わかりやすいのは3のパイロトーシスで、これは(我輩が理解した限り)細胞膜を破裂させ、細胞の中身(細胞質)をぶちまけることで自死させるメカニズムである。いわば、「爆破」である。

2のネクロトーシスは、「壊死」のプログラムバージョンで、「爆破」はしないかもしれないが、最終的には細胞の中身が外部に漏れてしまい、自死するメカニズムだと言う。通常の「怪我」や「放射線照射」「化学物質による汚染」などで細胞が破壊されるメカニズムを、自らが行うものをネクロトーシスというらしい。

1のアポトーシスは、釈迦が餓死寸前のトラに我が身を食べさせトラを救った故事があるが、それに似ている。自らを細切れにし(この段階では細胞は破壊されない)、白血球などの「掃除や」に自らを食べさせるメカニズムだという。

アポトーシスはどちらかというと時間がかかるメカニズムなので、ハッキングが深刻な場合はほど、ネクロトーシスやパイロトーシスが選択されるようである。

たとえば、自分がゾンビになりつつある(つまり癌化)と察した時は、アポトーシスを選ぶようである。癌化するプロセスは、ウイルスによる感染よりもゆっくりなのだろう。脊椎動物が対ウイルス戦のために特に発展させたのがネクロトーシスだという。なるほど、時間がない、というわけだ。パイロトーシスも、やはり病原菌やウイルスに潜入された時にとる戦法らしいが、詳しいことは専門家に任せよう。(新型コロナウイルス では、どうやらパイロトーシスは起きていないらしいので。)

どのプログラムで自死するのか

細胞がどの方法で自死するのか、誰がどうやって判断するのか?誰は簡単で、自死する細胞である。「俺はもうダメだ。自死を決行する」という感じだろう。先日のNIAIDの写真はそういう状態の写真なのだ(下に再掲する)。

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NIAIDが公表した、新型コロナウイルス に取り憑かれ「自死を選んだヒトの細胞」

(細胞の表面が波打っているのが、自死のプロセスが始まった兆候)

細胞死の引き金を引くのは、細胞内にある様々な器官が発する「悲鳴物質」ともいうべき「ストレス物質」だという。例えば、細胞膜にある受容体に、ウイルス侵入による細胞破壊の結果生じる物質がキャッチされると、細胞膜からシグナル物質である「デスリガンド」と呼ばれる錯体が放出される(金属と有機化合物の混合分子)。

 

細胞の中には、カスパーゼの前駆体であるプロカスパーゼという物質が常駐していて、シグナル物質の反応してカスパーゼという酵素へ「変身する」。あたかも、サナギマン(Pro-caspase)からイナズマン(Caspase)である。「サナギマン」はまだ酵素ではないが、「イナズマン」は酵素である。

酵素というのは、生体化学反応における触媒(反応促進物質、ブースターのようなもの)であるが、この「イナズマン」は細胞死を加速する酵素であるから「死神」のようなものである。

カスパーゼには活動開始を指令するものと、実際に酵素として活動するものに大別される。カスパーゼの本職は「タンパク質分解」のブーストである。つまり、細胞を分解して「細胞死を促進する」のが仕事である。

サイトカインストーム

カスパーゼは全部で12種類あるそうだが、今回の論文で注目しているのはその8番目である(カスパーゼ8)。これはタンパク質分解の開始を制御するイニシエーターに分類されるが、その役割はこれまで明確にはわかっていなかった。どうやら、新型コロナウイルス が細胞に取り憑くと、カスパーゼ8が誘起されアポトーシスが始まる。さらにネクロプトーシスも始まり、デュアルモードで細胞死が加速するようなのである(つまり、早い自死モードと遅い自死モードの両方で自死していく)。

このとき、カスパーゼ8はサイトカインを大量に分泌する信号としても働くのではないかとこの論文では主張されている。これにより、ハッキングされた細胞めがけて免疫細胞が押し寄せ、抗体を使ったり、直接食いついたり、あるいは細胞破裂(ネクロプトーシス)を誘起するなどして、感染した細胞の除去を始めるのではないか、ということらしい。これは結局「ひどい炎症」である。

生体を構成する細胞を、ダメな領域と使える領域に分け、ダメな領域をばさっと切って捨ててしまう戦略というわけだ。いわば、凍傷などで壊死した指を切断するようなものである。

ところが、切断をやりすぎてしまえば、生体の存続に関わってしまう。指の1、2本なら命は助かるが、足2本と首一本を切断すれば生命体そのものの命は終わってしまう。

新型コロナウイルス に感染して、重症化する人たちは、このようにアポトーシスやネクロトーシスが激しく発生して、炎症が酷くなりすぎてしまい、いわば壊死した部分の切断をやりすぎて生命体全体の命を脅かしてしまうらしい。

結局、未知のものに対し、生体がパニックを起こしている、という状況に似ているのではないだろうか?吉田兼好徒然草に「猫又」という化け物の話があるが、あの和尚のように恐怖に囚われた(免疫系が)無様に振る舞ってしまう、という感じだろうか?

ということは、和尚に「これは猫又にあらず。単なるミーちゃんに過ぎぬなり」と教えてやれば、月夜の影に腰を抜かしてドブに落ちることもないだろう。

専門用語

epithelial cells : 上皮細胞

麻生大臣のマウスシールド

麻生大臣が装着していることで、よく知られる「マウスシールド」。

https://img.news.goo.ne.jp/image_proxy/compress/q_80/picture/dailyshincho/m_dailyshincho-670200.jpg (goo newsより)

個人的には「いいね」と思っているのだが、実際のところはどれほど機能的な意味があるのか懐疑的な人も多いだろう。特にエアロゾルの観点からは、最近フェイスシールドとマウスシールドは(ウレタンマスク以上に)「除(の)け者扱い」にされているので、その効果について調べてみることにした。(とはいえ、やはり、決め手は富嶽のシミュレーションだった。)

まずは、麻生大臣の「マウスシールド」はどこで手に入れられるのであろうか?気になるので調べてみた(機能というより、もほやオブジェとしての興味である)。どうやらこちらの商品らしい。

http://wincam.co.jp/2020/wp-content/themes/wincam/assets/images/headset-img010-1000x675.jpg wincam.co.jpより

この会社の定義では、これは「透明マスク」というカテゴリーとなるそうで、商品名は「ヘッドセットマスク」というそうだ。

5μmまでの微粒子を可視化できるカメラで撮影した実験の様子が動画で公開されていて、非常に興味深い(特に、頭上周辺の様子がよく見えないアングルで撮影されている点)。

先日の調査でわかったのは、細かい飛沫は10μm程度ということであったから、5μmまで映る映像はそれなりに価値があるだろう。前方に飛沫が飛ばないのは当然と言えば当然であるが、我々がもっとも興味あるのは、マウスシールドの上方や下方にどれだけエアロゾルが抜けてしまうのか、あるいはマウスシールドで反射した飛沫がどれだけ後方に飛ぶのか、という点である。

ここで富嶽の登場である。合唱のケースなど、様々な状況でシミュレーションをしているが、ここでは食堂のケースを見てみよう(PC Watchがいろいろなケースについてまとめてくれている)。先日の記事で取り上げたケンブリッジ大学と同様に、富嶽でも「会話」つまり「おしゃべり」を想定して計算している。

まずは、マスクなし、マウスシールドなしの場合。

www.youtube.com

30秒でそれなりの(まずい感じの)量の飛沫がが対面の人物に吹きかかっているのが確認できる。

さて、ではマウスシールドを装着するとどうか?

www.youtube.com

なかなかいいな、と思ったはずである。前方に座る方に直接の飛沫はほとんどかからない。ただ、青い飛沫(だいたい0.5μm程度の飛沫)が、頭上、そして顎の下あたりに漏れて漂っているのが確認できる。0.5μmというのは500nmだから、ウイルスの直径の5倍に相当する。大雑把にみて、この飛沫1つには125個程度のウイルスが入っている可能性があるということだ。塵も積もれば山となる、というが、この青色の「雲」が空間に滞留すると、感染のリスクが生じてしまうというのが、先日見たケンブリッジ大学のシミュレーション結果である。

上の動画の21秒目の様子をスクリーンショットしたのが、下の図である。

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マウスシールドの効果を検証する富嶽の計算(上の動画の21秒目のスクリーンショット

ケンブリッジ大学の研究チームが警告しているのが、この頭上あるいは顎の下に漂いでた飛沫の「雲」である。この「飛沫雲」は1時間以上も部屋に滞留するそうだから、この状態で30分飲み食いをすると、エアロゾルを吸い込んでしまって、感染の可能性が高まるだろう。

また、マウスシールドの傾き(角度)も重要だろう。もし、頭を前方に傾け、上目遣いに喋ってしまうと、飛沫の流れはもう少し前方に飛ぶはずである。装着角度を前方よりにした場合も同様になるだろう。このばあい、直接、人に吹きかかる確率も上がるはずだ。

ということで、マウスシールドは5μm程度の飛沫を防ぐ効果は結構あるようだ。しかし、0.5μm程度の細かい飛沫が飛び散って、雲のように室内を漂ってしまうリスクがあるようだ。最初にマウスシールドを見た時、「これじゃあ、透明な下着と同じじゃない?一応装着しているけど、逮捕だよね」と揶揄していたこともあったが、製造会社や富嶽のシミュレーションを見る限り、それほど酷いものではないことがわかったのは、収穫だった。

しかし、室内の記者会見で、語気を強めて30秒以上話すときは、マウスシールドよりも、不織布マスクの方が安全だと思った次第である。「直球」じゃなくて、「変化球」に注意ということだろう。上から流れ落ちてくる飛沫が心の目に映るようになれば、それは富嶽のおかげである。これで「感染経路がわからない」ケースは少しは減るのではないか(「会議中、マウスシールドをつけた人と30分ほど会話をしてしまった」という聞き取りがあれば「エアロゾル感染」とすればよい)。

エアロゾルによる感染とはなにか?

エアロゾルによる感染とは、「ミクロな飛沫」に含まれるウイルスの吸入による感染である。ググると最初に出てくるのが「日本エアロゾル学会」の説明である。大きさは様々で数ナノメートル(分子やイオン)から数百μm(=数万ナノメートル)の花粉粒子までと幅が広いという(ちなみに新型コロナウイルス の直径はだいたい100nm)。日本語で「粉塵」「煤塵」などと呼ばれているものもエアロゾルの仲間だという。

今興味があるのは、唾液のエアロゾルの大きさである。直径100ナノメートルのウイルスを含む「微小な唾液の液滴」であるから、その100倍くらいの大きさだろうか?だとすると、10μm程度だから花粉の1/10程度の大きさなんだろう(調べてみると、一番細かいもので、だいたい予想通りの10μmだった)。だとすると、目には見えないはずだし、「鼻だしマスク」の場合は容易に感染してしまうのが想像できる。

この目に見えないほどの小さな唾液の液滴にどのくらいのウイルスが入っているか、おおよその見当をつけてみよう。飛沫とウイルスの半径の比は100倍なので、体積比に換算すると\(10^6\)倍、つまり飽和していると仮定すると100万個のウイルスが,花粉の1/10程度の半径を持つ液滴1滴中に含まれていることになる。この飛沫を1万個ほど吸い込んだら...もう、この先は想像したくないだろう。

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新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)に取り憑かれ、自死モードになった細胞(つまり死に追い込まれたヒトの細胞):出典 NIAID

エアロゾルによる感染は昨年の早い段階から疑われていたが、CDCでは最初その存在を否定したり、しなかったりと意見がなかなかまとまらなかった(最終的には認めた)。しかし、流体力学シミュレーションによる研究や感染メカニズムの分析が進み(日本の場合だと、世界一高速のスーパーコンピュータ「富嶽」で行ったマスクの計算である)、今やエアロゾルによる感染は周知の事実になりつつある。ただし、その詳細はまだ知られておらず、空気感染との違いや、飛沫感染がメインでありエアロゾルは特別な場合に過ぎないのか、あるいはエアロゾルも普通のマスクで防げるのか、それとも防げないのかなど、曖昧な点もまだまだ多い。

そんな中、「喋る」ときに生成されるエアロゾルの方が、一回の咳で生成されるエアロゾルより危ないかも、という結論を示すシミュレーション結果が発表されたケンブリッジ大学の流体計算の専門家)。この論文は実に長い論文だが、素人にもわかりやすい「まとめ」があって、それによると、換気の悪い部屋で30秒喋り続ける方が、咳を一回した場合に比べ、エアロゾル感染の確率が高くなるという。咳でできるエアロゾルよりも、お喋りで生じるエアロゾルの方が、より細かいため遠くまで飛びやすいのが原因だという。

感染に必要な数のウイルスを含んだ細かいエアロゾルの「雲」は、2m離れた場所までわずか数秒で移動するというシミュレーション結果が得られ、仮に拡散して最初の感染を免れたとしても、換気の悪い部屋では1時間以上空気中に滞留し、感染のリスクが時間とともに高くなるという。

マスクをつけた場合の計算は精密には議論されていないが、彼らが発表しているシミュレーションにはマスクの効果も取り入れられており、感染のリスクが大きく下がることは示唆されている(やはり、マスクの計算は富嶽の方が上であろう)。

さて、ここで、興味深いことがひとつ浮かび上がってきた。先日調べたTwitterや新聞記事などで紹介される「感染の経験談」には、「感染対策はしっかりしていたので、どこで感染したかわからない」という感想が書かれていることが多い。先日、東京新聞で報道された東京都議の経験談もそういう内容であった。

www.tokyo-np.co.jpこの取材に応じてくれたのは、都民ファーストの会の山内都議(53)と、立憲民主党の山口都議(48)である。彼らの情報提供は、保健所の情報よりも貴重な情報で、とてもありがたく、感謝申し上げたい。

山内さんは「常にマスクを着けて会食も避けていた。感染経路に全く心当たりがない。あえて挙げれば立ち食いそば店電車内。一般的に感染場所とは考えにくく、....」と取材に答えている。これはまさに、喋りによる「エアロゾル」ではないだろうか?

列車内では最近、30秒以上のおしゃべりする人は少ないだろうから、多分立ち食いそばだろう。店主の「いらっしゃいませ」や「二百五十円になります」という説明、あるいは客同士のちょっとした短い会話などが、山内さんがお店に入る前の1時間前に発生していたとしたら、感染が起きても不思議ではない。もちろん、客や店主のマスク着用の有無、店の広さ、換気の良し悪しなど、考慮すべき点はいくつもある。しかし、感染したのは12月中旬だったということだから、おそらく換気は少し控えめだったと思う(開けっ放しにはなってないだろうから)。

山口さんも同様にコメントを残しているが気になる点もある。記事を引用すると

マスク着用など感染防止に努めていた。感染の心当たりといえば「一度だけ昼に入った定食屋」。「近くの客がマスクなしで激しくせき込んでいた。年末の疲れもあり、免疫力が落ちていたのかも」

 とある。これは隣の客の咳によって生じたエアロゾルが、数秒後に山口さんを取り囲み、その後30分近くにわたってご飯を食べ続けてしまったのであろう。換気がしてあっても、食事の時間内にウイルスを排気することができなかったのではないだろうか?

ということで、先ほどのケンブリッジ大学の研究グループが公開した「簡易シミュレーション」をやってみることにした。想定するのは、その昔よく食べに行った中目黒や祐天寺付近の狭い駅前蕎麦屋である。1畳はだいたい1.5m2程度としよう。店の中は細長い感じで、カウンターに10席ほど横並びになっているとしよう。広さは、まあ5畳程度とみなし大目に見て10m2と仮定する。12月中旬の寒い状況を考え、換気は悪いとしよう。ここに感染者が一人紛れ込んでいるとする。満席状態で、店主を含め十一人が店にいる状況にしよう。感染者はマスクをしていない。蕎麦をすすっているとする。自分も蕎麦をすすっているので、マスクを外しているものとする。食事の時間は30分とする(蕎麦屋だからもう少し短いとは思うが)。

さて、この状態でシミュレーションを行うとどうなったかというと、下のようになった。

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airborne.camによるシミュレーションの結果

感染確率は一応3.27%と出たが、このシミュレーターの設計者も注意しているように、モデルや仮定によって絶対値は大きく変わる。したがって、同じ状況でマスクをつけたり外したりして、「相対的な確率」をみて考察すべきである。

ということで、似たような部屋を想定し、そこで今度は「会議」している状況としよう。ここに感染者が一人いるとする。ただし今度は、感染者も含め、全員マスクをつけているとする。誰も飲食していない状況というわけだ。

この場合、シミュレーションの結果、感染確率0.56%となった!だいたい1/6程度にまでリスクは減少するというわけだ。逆に考えれば、マスクを外す状況というのは(たとえ自分が無言で食べていても、狭い店内で誰かが1時間以内に30秒ほど会話をしてしまっていると)感染リスクが5,6倍に跳ね上がることを示唆している。

つぎは、自分はマスクをしているが、感染者がマスクをしていない場合を考えよう。これは、迂闊な人間が参加している会議、あるいは迂闊な人が一人乗りこんでいる、空いた感じのバスに乗り合わせてしまった場合に相当するだろう。乗車時間や会議時間は同じく30分とする。すると、感染確率は1.37%となった。マスクーマスクの2.5倍のリスクであり、「蕎麦屋」のリスクの1/2.5程度である。

満員列車が面白そうなので、同様にシミュレーションをやってみよう。想定としては、自分が乗った満員列車の車両に運悪く感染者が一人いて、その友人と30秒だけ会話をしてしまった、という状況を考える。冬の締め切った車内を想定し、換気は悪い状態とする(東京の列車の場合は、停車駅が多いので換気はまあまあとしても良いだろうが、ここではあえて換気を悪くしてみる)。

山手線の場合、面積は約50平米、定員は160人だというから、この数字をそのまま利用しよう。また扉の高さは1.85mであるそうなので、天井の高さを2.5mにしよう。前書きの通り、換気は悪くしておく。この状態で、感染者が一人(つまり市中感染率0.625%に相当)紛れ込んでいたとして、この列車に自分が60分乗ってしまうものとする。

まずは、感染者も含め、全員がマスクをしている場合の感染確率は2.83%と出た。これは「蕎麦屋」よりもちょっとだけ分がいいが、同じくらい危険であることを意味している。

つぎに、感染者がマスクをしていない、という恐ろしい状況を考えてみよう。この時の結果は6.77%と、「蕎麦屋」の2倍以上のリスクとなった。当然といえば、当然であるが、満員列車に毎日毎日乗っていれば、年に何回かは、こういう日もあるだろう。

また、直接感染者と同じ車両に乗り合わせていなくても、自分が乗る60分前に、同じ車両に感染者が乗っていて、30秒ほど会話をしてしまった状況であっても同様のリスクは残ってしまうのだ。冬場のように換気が悪いとなおさらである。

ということで、東京都議の貴重な体験談をもとにして、ケンブリッジ大学のシミュレーションを行ってみたが、やはりマスクや換気の重要性を感じた次第である。感染研はいい加減「市中感染」の存在を認め、列車内や狭い蕎麦屋で感染が「エアロゾル」で起きていることを、詳細なシミュレーションとともに発表するべきである。この映像をみると、人々は(特に日本人は)容易にロックダウンに同意してくれるはずだ。(総理大臣は理研と感染研にこの計算や分析を行うようにすぐにでも命令を出すべきだろう。)

ワクチンと集団免疫獲得について:イスラエルからの嫌な感じのニュース

 

イスラエルのアグレッシブなワクチン接種プログラム

以前にも取り上げたが、現在世界でもっともワクチン接種が進んでいる国がイスラエルである。1月17日のABC newsの報道では、国民の25%弱がすでにワクチン接種(多分1回目だけ)を終了したという。本日のデータを手に入れることはできなかったが、おそらく40%近くになっているはずである。この調子でいけば、新型コロナウイルス に対する集団免疫を獲得できるとされる70%まであと少しであり、イスラエル政府は2月末にもそれは実現できると見込んでいる。

そんな「希望に満ちた」イスラエルからいくつかの嫌なニュースが入ってきた。

ファイザーのワクチン:英国の賭け

ファイザーのワクチンだけでなく、現在許可が出ているワクチン全て(モデルナ、アストラゼネカ)が、「抗体を身につける」ために2回の接種が必要である。

ところが、英国はこの規約を破り、とりあえず1回だけでも可能な限り多くの国民に接種させることを優先する方針に急遽転身した。ファイザーの場合、3週間後に2回目の接種をすることになるのだが、2回目を受ける予定だった人を待たせて(ほんの一部の人たちは予定2回接種できたようだが)、1回目の人を優先することにしたのだ。

そもそもワクチンを製造した製薬会社ですら、このやり方を推奨していないのに、どうしてこんな「無茶」をやることに決めたのかというと、それはワクチン接種のペースがどうしても上がらないからである。

BBCによれば英国の接種率は1月上旬で2%程度であった。本日の記録を見ると1回目の接種が終了した人が約8%、2回目が終わった人が0.7%となっている。英国のワクチン接種が始まってから6週間が経ったので、単純計算で、1回目の接種が集団免疫に到達するまでにあと1年ほどかかることが見込まれる(これでもペースは上がってきている)。2回目の接種はというと、2週間ほど前に始まったばかりであることを考慮に入れても、完了するまでに、なんと、あと4年近く(正確には3.9年余り...)もかかる見込みである。

どうしてこんなに悠長にやっているのか!と叱り飛ばしたくなる気持ちはよくわかる。しかし、感染爆発が起きて病人の世話だけでも大変なところに、ワクチン接種もやらねばならない医者や看護師の身になって考えればわかるはずだ。医療崩壊した状況では、ワクチンどころか、通常の医療すら困難な状況なのだ。

英国で感染爆発を引き起こした原因は周知のように新型の突然変異VOC-202012/01である。これが12月の初めから爆発的な感染を引き起こし、英国のワクチン接種計画を根本から破壊してしまったのだ。仕方なく、英国は完璧にやるよりも、次善の策をとることを選んだのである(1回の接種だけでもなんとか早く打ってもらう政策)。

この政策にはひとつの「賭け」があった。それは、「規格外かもしれないが、もしかすると1回の接種でも結構な抗体が作られ、完璧とは言わないまでも、なかなかの予防効果が出てくるのではないか?」という期待である(科学的ではない、単なる希望である)。

ファイザーのワクチンは1回だけ打ってもダメ:イスラエルからの報告

英国政府の希望を打ち砕くような報告が先日イスラエルから発表された。どうやら、ファイザーのワクチンは1回目だけではさっぱり効果がないらしいのである(少なくても、接種から2週間は、打っても打たなくても感染に違いは出なかった)。

www.theguardian.com

イスラエルではすでに3割以上の国民が1回目のワクチン接種を完了している。それにも関わらず、1月18日に、1日の新規感染者としてはこれまでに最悪の1万人(!)が報告されてしまったのだ。東京が2500人/日を記録した1月上旬に、このままいけば1万人/日に間も無く到達してしまうのではないか?という恐怖を感じた方は多かったはずである。それがイスラエルでは実際に起きてしまったというわけである。(日本全体でも、まだ1日の新規感染者が1万人を超えた日はない。最大でも8000人/日以下である。)

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イスラエルの新規感染者の推移:Data source from John's Hopkins University

日本ではワクチン接種はまだ始まっていないにも関わらず、非常事態宣言を出したところ、東京での感染者は1000人/日程度まで下がってきた。つまり、ワクチンを1回打って食べ歩くよりも、ワクチン打たずに家にこもる方がよっぽど効果がある、ということらしいのだ。これは驚きの結果であり、世界中が注目している。特に、ワクチン1回政策を採用した英国は冷や汗をかいている最中である。

The guardianの記事によると、Pfizder+BioNTechのワクチンは2回でセットの設計であり、設計通りに接種を2回行うと、ワクチン接種していない人と比べて、6倍から12倍の抗体価が得られることがわかっている。1回目の接種で下地を作り、2回目で一気に抗体価を上昇させるこの方法は「スーパーチャージ」と記事では表現されている。

アロンアルファにも2つの接着剤を混ぜ合わせるタイプが存在する。1種類だけでは接着しないが、2つを混ぜると「スーパー接着」するようになる。これと同様の反応がmRNAワクチンでも起きているようなのである。

ただ、製薬会社は「1回でもまあまあの効果はあるだろう(そういう観点から研究してないのでデータはないが...)」という感じのコメントをしていた。しかし、イスラエルの「治験データ」に基づくと、製薬会社が予想したよりも効果が薄いことが示されつつあるのだという。

多くのイスラエル国民が1回目のワクチン接種を打ち終わり、2回目の接種を終えた国民も40万人に及ぶ。それにもかかわらず、最悪の感染者数が発生してしまったのは、イスラエルでも英国由来の変異株VOC-202012/01が次第に優勢になっているからである。イスラエルの専門家によれば、あと数週間でイスラエルの主要株は英国由来の突然変異に入れ替わるという。つまり、この突然変異の拡大速度は、世界最速のワクチン接種のペースを誇るイスラエルですら追いつけないようなのだ!

2月下旬にも集団免疫を獲得し、3月になれば「昔に戻れる」と胸を張っていた、イスラエル政府の自信は急速に縮んでおり、現在ウイルスとの競争に負けるかもしれないという「緊張感」に包まれているそうである....

BBCの報道:より詳細な情報

1月21日付のBBCの報道を見つけた。

www.bbc.com

イスラエルでは、1回目のワクチン接種を終えた何千人もの人が感染してしまったというが、イスラエル政府は「このニュースに動揺しないように」と呼びかけているそうだ。(まだ科学的なエビデンスが集まってないから、ということらしい。)

一方で、イスラエルの科学者が公表したデータによると、最初のワクチン接種を受けたあとでも、2週間以上は効果が出ないという結果が出ているそうである。つまり、1回目のワクチンを受けても受けなくても、2−3週間はワクチンを受けてない人と同じように感染してしまうのだという。ところが、この期間を過ぎて、ひと月近く経つと、少しずつ1回目の接種を受けただけの人でも、抗体が強まってきて、1回も接種してない人に比べ、感染率は2/3程度に減少するそうである。つまり、1回目のワクチンの役割は、体内でゆっくりと抗体を増強する素地を作ることのようである。素地が整った段階で2回目の接種をすると、「スーパーチャージ」が起き,一気に抗体や免疫が強まるようである。したがって、1回目の後にきちんと自粛し、油断して感染しないようにし、2回目を確実に接種することが重要だ。これが、このウイルスに勝つための鍵となるようである。

したがって、英国政府の政策(1回目のワクチンをとにかく優先する手法)を採用する場合、3週間程度は完全なロックダウンを実施するべきだろう(イスラエルはこれに失敗しているようで、1回目のワクチンのあと、結構出歩いてしまっているようだ)。

 イギリスからも嫌なニュースが

英国からも嫌なニュースが届いている。どうも英国由来の突然変異株VOC-202012/01は、これまでのGR,GH,GV変異体などよりも、致死率が高いらしいのである。

mainichi.jp

この変異株は絶対に蔓延させてはならない。

イスラエルの経験から我々が学んだのは、「1回のワクチンより、ロックダウンの方が今はずっと有効」ということである。日本は、ワクチンが遅れていることを恥じる必要はない。家にこもる方がずっと科学的に「強い武器」であることが判明し、他の国や文化の人々ができない「自粛能力」がずば抜けて高いのだ。(イスラエルは、ロックダウンをかけているが、人々は言うことを聞かずにちょくちょく礼拝に出かけて、多くの人と挨拶を交わし、食事を共にしているそうである.....)この「武器」を使って、なんとか感染爆発を食い止めることは我々ならできるはずだ。

 

 

ピークアウトしたか?それとも一時的な鈍化か?

今日の東京の新規感染者の数は1175人であった。金曜日であること、先週は2000人を超えていたこと、などを考慮すると、「ピークアウト」したように思える。

はっきりした傾向は見えてはいないが、悪い方向には行ってないことは明らかだ。望みがつながった、という感じである。

とりあえず、曜日ごとのグラフを見てみよう。

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曜日別の新規感染者の推移

今日(金曜日)から34週目に入った。まず初日が大きく減少しているのは良い点である。先週の金曜の数が2000人を超えていただけに、本日の感染者数は34週の合計を考える上でも大きな減少となる可能性を示唆していると思う。おそらく、次の木曜日に34週目の合計人数を計算した際に「ピークアウト」という結果になっている可能性が高まってきた。もちろん、明日、明後日も大きな人数が出る可能性がある曜日である。油断は禁物だが、とりあえず、緊急事態宣言の効果はある程度「出ている」と判断して良いだろう。

この調子で、減少していってもらいたいと思う。政府は、2月8日なっても中途半端に宣言を解除しない方がいいだろう。今の苦しさを乗り越えれば必ず、来年は素晴らしいことになると思う。

ここでとても重要なことがある。南アフリカで発生したと言われる501Y.V2の突然変異である。この突然変異について今日嫌なニュースを聞いたのだ。どうやら、この突然変異は、抗体の攻撃をすり抜けるのが非常にうまいらしい。つまり、ワクチンが効かない可能性があるのだ。加えて、一度感染してもその経験で得た抗体が次は効かない、つまり何度も何度も何度も感染する可能性がある、ということらしい。南アフリカの研究では、治癒した人の血清を使った血清治療がまったく効かなかったという。

この501Y.V2はいずれ必ず日本に入ってくる。となると、このタイプの突然変異を絶対に日本で流行らせてはならないのだ!一番恐ろしいのは、今回の第3波を切り抜けて油断した日本人が、中途半端な状態(例えば1日の感染者が500人とかの状態)で、再びgotoなんとかやら、桜を見るなんとかやらを始めてしまい、再度「感染爆発」を起こしてしまうことだ。もし、その感染爆発に、501Y.V2が混じっていると、もう手が施せないほど酷いことになる。ワクチンが効くウイルス株の段階で徹底的に叩いておき、新型の突然変異が混じった形で感染拡大を引き起こさないことが肝要である。これは「ゼロコロナ政策」にほかならない。

この感染症の特徴は、どうやら感染しているうちに次々と新型の突然変異を引き起こしてしまい、次第に手に負えなくなってくる性質をもっているようだ。絶対に絶対に、感染を二度と拡大させてはならない。奴らに遺伝子をコピーさせる機会を与えてはならない。そんなことをやっているうちに、恐ろしい化け物(突然変異)が飛び出してきてしまうだろう。今なら勝てる。だから油断しないで、徹底的に殲滅作戦を行うべしなのである。