木曜日になったので、直近1週間のデータをつかって、感染動向を振り返ってみたい。
先週の分析を読むと、「増加は鈍ってきたが、12月の終わりに作った予想曲線に戻ってきただけの可能性がある。つまり、年末年始の異様な感染爆発は終わったものの、12月の状況を基準に見たとき、(1月の状況は)まだまだ指数関数的な増加の範囲にとどまっているのかもしれない」というまとめであった。
ただ、この分析直後の数日の動向をみた上で判断するべし、とも書いていて、その翌日(金曜日)の激減を見て、「ピークアウトしたと見られる」と結論した。
この結論を書いた後も、順調に前の週を下回る曜日が相次ぎ、1000人を下回る日も複数回発生した。特に、月曜日は600人台が記録され多くの人が安心したのではないだろうか?(翌日に再び1000人を超えたがっくりしたかもしれないが)。
ということで、今回(34週目)は大幅な減少が記録されたのである。グラフで確認してみよう。
まずは、黄色の予想曲線で示されるような「年末年始の感染爆発」のシナリオは消え去ったと結論していいだろう。これで、桜が咲くまでに「東京で感染者が1万人/日」とかいう報道がされる可能性は減少した(とはいえ、変異株の動向は気になるし、2月末にgoto再開とか、変なことを政府がしない限りにおいてはだが)。この黄色い予想曲線は今週で外すことにしよう。
次に、34週(つまり今週)までのデータを見る限り、第3波のピークは2週間前の第32週、つまり1月14日前後であったことが強く示唆されている。実は、これは12月の中旬に予想していた通りの結果であった。上のグラフの水色の正規分布のピークの位置がその予想曲線である。ただし、感染爆発の規模に関しては完全に「過小評価」であった。(最大でも1000人/日程度だと思っていた...)
予想通りに来ている部分と、予想を上回る部分が混在している状況である。
ではなぜ、感染爆発の規模は予想を上回ったのだろうか?それは、やはり、年末年始に人に会って、飲み食いをし、楽しい会話を楽しみたい、という願いを持った人が予想以上に多かった、ということに尽きる。
この年末年始の感染爆発は、なにも日本だけの話ではないのだ。英国のグラフを見ても、米国のグラフを見ても、年末年始をピークにして、急速に感染者数は減少しているのである。もちろん、この2つの国はロックダウンをしているので、その効果もあるだろう。しかし、ロックダウンというのは政府の方策であるに過ぎず、実際に人々がその通りに行動しているかというと、どうやらそうではないらしいのだ。
やはり、年末年始は、ロックダウンの決まりを多少破ってでも人に会いたいのだ。「まあ、いいいでしょ」という感じで世界中の人々が交流を続けていたのであろう。休暇が終わり、仕事が再開し、いつもの生活が戻ってきたため、自然と感染者数がいままでのトレンドのところまでは戻ってきたと解釈すべきだろう、と多くの人が考えている。
感染者数の推移については、よく知られた一般的特徴がある。すなわち、ピークの前後でグラフが対称的になっていないのだ。ピークに登るまでは鋭いが、ピークを降りるときは緩やかになるのである(一般的に)。この傾向は、英国のグラフにすでに見られる(米国は今のところはかなり対称的に見える)。
東京のデータを見てみよう。ピークの位置が32週目にあるとすれば、その前後の「対称的な位置」にあるはずのペアは(31,33)および(30,34)週目ということになる。しかし、この2つのペアの両方でピークの後の方が感染者数が多いのがわかる。つまり、
31週目の感染者数 < 33週目の感染者数,
および
30週目の感染者数 < 34週目の感染者数
という関係がある。ピークの後の方が数が減りにくい、という一般的な傾向が見え始めていると考えていいだろう。夏の第二波のときは、ピークアウトした後、平衡値に高止まりしてしまった。これが第3波が爆発する原因になったと多くの専門家は指摘している。今回、同じ轍を踏まないようにするには、ピークアウト後の減少は「緩やかになる」という傾向を理解した上で、自粛期間を(我慢して)長めに設定し、高止まらないようにするのが肝要であろう。
嫌な予感がするのは、週5000人程度のレベルで高止まりしそうな感じに見える点である。国会議員が夜中に隠れて銀座で飲んでいたとか飲んでいないとか、新橋や新宿で暖簾を外した後に常連さんだけを奥の部屋に呼んで営業を隠れて続けていたりとか、我慢ができなくなり始めた人たちが増え始めている。第二波のようなことになってはいけないと思う。
幸い、ワクチンはきちんと2回の接種を受けると、かなり強力な効果をもたらしてくれるらしいことが、イスラエルからの報告でわかってきた。突然変異が巷に出回る前に、日本は感染拡大に終止符を打っておくべきだろう。台湾や中国で感染が再開しているような気配があるが、これは南アフリカやブラジルの変異株が関係しているかもしれない。従来の対策では抑えきれないとすれば、それは今あるワクチンが効きにくいとか、若年層もやられる可能性が高いとか、そういう可能性が発生していることを想定しなくてはいけなくなる。実に嫌な感じがプンプン臭うのである。面倒臭い突然変異が流行りだす前に、日本社会は「ゼロコロナ」を一旦でも達成し、世界に「さすがは日本」と言わせたいものである。
報道によれば、政府は緊急事態宣言の期間延長を非公式ながら決定したということである。この判断は正しいと思う。減少傾向にあるとはいえ、今週の感染者数は7000人弱であり、平均値を見れば1日に1000人の新規感染者が東京で発生していることになる。政府が目指す「1日500人」を大幅に超えている。来週までに解除ラインまでに感染者数が落ちてくるかというと、今日までのグラフを見る限り「微妙」な感じがする。
ただ、不可能ではないと思う。というのは、そのレベルというのは、予想曲線(水色)のちょっとだけ下の水準だ。かなり難しいとは思うが、不自然なグラフになるとまでは言い切れない。もっともありうるのは、週5000人レベル前後(日平均にすると700人ちょっと)ではないかと思う。そうすると、延長はだいたい1ヶ月程度になるはずで、3月の上旬あたりまで、ということになろう。
ただし、その段階で500人/日というのは、あまりにも危険すぎる。2月は忍耐の月と考え、何とか東京の新規感染者が二桁、つまり(平均値で)100人を切る程度にまで持って来ないと、オリンピックをやれるような状況にはなりえないと考える。オリンピックの有無に関係なく、一早い終息を願うのであれば、2月は誰とも喋らないようにして過ごし、新型コロナウイルス殲滅作戦(「ゼロコロナ」)をやり遂げてもらいたいと切に願う。